人間の体には、光と暗さに応じて体内時計を調整する仕組みがあります。
夜間に明るい光を浴び続けると、このリズムが乱れ、睡眠の質が低下したり、ホルモンの分泌が狂ったりする可能性があります。

また、野生動物への影響も無視できません。
たとえばウミガメの子どもは、月明かりを頼りに海へ向かいますが、陸の人工照明の方が明るいと誤認して逆方向に進んでしまい、命を落とすこともあります。
昆虫や渡り鳥も、光によって方向感覚を狂わされることが知られています。
夜のオフィスや空に向けて照らす街灯、無人の駐車場など、私たちは気づかぬうちに“必要のない明かり”を大量に使っています。
もし世界中が一斉に明かりを灯したなら、その瞬間、空から星は消え、人や動物の体内リズムが乱れ、地球全体がまるで「夜を忘れた惑星」と化してしまうのです。
明かりの使い方を見直すとき
「電気をつける」という何気ない行動にも、実は大きなエネルギーシステムと環境への影響が隠れています。
仮に世界中の照明が同時につけられたとしても、停電が全世界に連鎖するような“終末シナリオ”は起きにくいかもしれません。
現代の電力インフラやLEDの普及が、それをある程度防いでくれるでしょう。
しかし、空の明るさ=スカイグローという代償は避けられません。
一斉点灯の夜には、誰も星を見上げることができず、静かに瞬いていた宇宙の光がすべてかき消されてしまうのです。
科学技術の進歩により、私たちはこれまでにない明るさと快適さを手に入れてきました。
けれどその一方で、夜の闇や星空といった、失われつつある「自然の光景」にも価値があることを、忘れてはならないのではないでしょうか。
今こそ、「明かりを灯す」という行為の意味を、もう一度見つめ直すときが来ているのかもしれません。
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参考文献
What Happens if Every Light in The World Is Switched on at Once?
https://www.sciencealert.com/what-happens-if-every-light-in-the-world-is-switched-on-at-once