再生可能エネルギーはというと、太陽光や風力は自然条件に左右されるため、瞬間的な需要に柔軟に対応することは難しいです。

このような急激な電力需要の増加は、送電網の制御システムにとって大きな試練となります。

電力系統運用者は、膨大なセンサーとコンピューターを使って常に需要を予測し、安定化を図っていますが、「世界中の照明一斉点灯」という極端な事態には、対応しきれない可能性があります。

ただし、ここで救いとなるのが2つの要因です。

まず、地球上には「単一の世界規模の送電網」は存在しません。

各国・各地域ごとに独立した電力網があり、たとえある地域で大規模な停電が起きても、他の地域に波及するとは限らないのです。

そしてもうひとつは、LED(発光ダイオード)照明の普及です。

LEDは従来の電球に比べて非常に効率がよく、少ない電力で多くの光を生み出します。

アメリカでは2020年時点で、家庭の約半数がLEDを主要な照明に使っており、年間約225ドルの節電効果があると報告されています。

つまり、同時に明かりをつけたとしても、消費される電力はかつてよりはるかに少なくなっているのです。

星が消える夜:スカイグローの恐るべき代償

電力網の負荷だけが問題ではありません。

「すべての明かりを一斉につける」とは、「世界を同時に照らす」ということでもあります。

その結果として起こるのが「スカイグロー(空の光害)」です。

これは都市部の上空に広がる、白く濁ったような明るさのことを指します。

大気中の水蒸気やチリに照明の光が反射し、夜空全体をぼんやりと照らしてしまう現象です。

スカイグローは、天体観測を難しくするだけでなく、星空を日常の風景から奪ってしまいます。

特に都市圏では、すでにほとんどの星が見えなくなっているという報告もあります。

問題はそれだけにとどまりません。

光害は私たち人間の健康にも悪影響を与えます。