たとえば「性格が似ていると思う」「外見が似ていると思う」「ライフスタイルに共通点を感じる」といった質問を通じて、どれほど“自分ごと”としてセレブを見ているかが測られました。

その結果、セレブへの強い憧れを持つ人ほど、「脆弱なナルシシズム(vulnerable narcissism)」─つまり、感情の不安定さや自己像への過剰なこだわり、他者からの批判への過敏さなど─のスコアが高くなる傾向があることが判明したのです。

また、セレブとの類似感が強い人ほど、この傾向がさらに強まりやすいこともわかりました。

自己愛と物質主義をつなぐ「セレブという鏡」

画像
Credit: canva

今回の研究で測定されたナルシシズムは、2つの異なるタイプに分けられています。

1つは「誇大的ナルシシズム(grandiose narcissism)」と呼ばれ、自信過剰や支配欲、他者への優越感が特徴です。

もう1つが先の「脆弱なナルシシズム」で、不安定な自己評価や感情の揺らぎが特徴です。

興味深いことに、セレブ崇拝と有意な関係が見られたのは、後者の「脆弱な」タイプでした。

つまり、誰かに認められたい、批判されることを恐れる、という繊細な内面を持つ人ほど、セレブに強く惹かれ、感情的に結びついているのです。

また、こうした人々は「自分はセレブに似ている」と感じている傾向が強く、それが憧れをより強固にし、結果として自己愛傾向や物質主義的な価値観を高める要因になっていると考えられています。

実際、セレブ崇拝と物質主義の間には強い関連が見られました。

憧れのセレブのような高級な持ち物やライフスタイルを追い求める傾向は、しばしば自己肯定感の補完手段として機能します。

さらに「誇大的ナルシシズム」を持つ人もまた、物質的な所有を通じて地位や名声を示そうとする傾向があることが示唆されました。

つまり、動機の違いこそあれど、自己愛傾向のある人々は、物質的なものやセレブとの関係性を通じて、自分自身の価値を支えようとしているのかもしれません。