研究チームは、原子時計を使って重力の影響を調べる新しい実験を提案しました。

この実験では、高さが約1キロメートルずつ違う3つの場所に光学式原子時計を設置します。

それらを量子の技術でつなげて、1つのまとまったシステムとして使います。

イメージとしては、1つの超高精度な原子時計が3つの場所に同時に存在しているような状態を作るのです。

この状態は、「量子もつれ」と呼ばれる性質によって実現されます。

離れた時計同士でこのような状態を作るには、量子テレポーテーション(粒子の状態を別の粒子へ瞬時に転送する技術)や、ベル対(2つの粒子が互いの状態を瞬時に影響し合うような特別な量子ペア)といった高度な量子技術を活用します。

ですが近年の急速な技術進歩により、これらは既に一部が実証済み、あるいは近い将来実現可能な技術であり、研究者らは組み合わせ次第で十分実行できると述べています。

こうして3つの時計が量子もつれで結ばれると、それぞれの高さの違いによって時間の進み方がわずかに変わります。

地面に近いほど重力が強くなるので、時間は少し遅く進みます。

その違いが量子の状態に「ズレ」として現れ、時間が経つにつれて3つの状態の間に「位相差」が生まれていきます。

この状態をまとめて測定すると、「干渉縞」と呼ばれるパターンが出てきます。

普通の状況では、干渉縞は3つのうち2つずつの組み合わせによって作られます。

つまり「1と2」「1と3」「2と3」という3組のペアがそれぞれ影響しあっているのです。

しかし今回の研究では、「3つすべてが同時に干渉しあう成分」が現れる可能性があると指摘されています。

これは、もし重力がボルン則に影響を与えているならば、従来の量子ルールだけでは説明できない干渉が起きることを意味します。

言いかえれば、干渉縞の中に「重力による歪み」が現れるかもしれないということです。

こうした効果はとても小さく、観測するのは簡単ではありません。