ですが研究者たちがフィルムの底面に「カーボンナノチューブ」を塗装すると、光エネルギーを吸収して飛行能力を獲得したのです。

しかし、なぜカーボンナノチューブの塗装で、ディスクは浮遊能力を得たのでしょうか?

カーボンナノチューブは空気分子を加速して放出する

ナノチューブ層から下方向に放出される空気分子の反作用でディスクは飛翔する
ナノチューブ層から下方向に放出される空気分子の反作用でディスクは飛翔する / Credit:Science Advances

なぜ樹脂ディスクにカーボンナノチューブを塗ると浮くのか?

その理由はまず最初に、光が下から照らされると、底面に塗られたカーボンナノチューブは光を吸収して温度が周りの空気よりも高くなります。

このとき、周囲の空気分子が温められたカーボンナノチューブ塗装に触れると、塗装の熱が空気分子にもつたわって、空気分子のエネルギーはカーボンナノチューブからもらった温度のぶんだけ上昇します。

そして温度があがった分子は、運動エネルギーが増して動きが早くなります。

さらに加速した空気分子はカーボンナノチューブ塗装内部で乱反射を起こし、より多くのエネルギーを得て加速し、最終的には下方向に向けて逃げていきます(上方向はフィルムで塞がれている)。

つまり、下からの光が底面のカーボンナノチューブ層を加熱し、その熱が底面に触れた空気の運動エネルギーを増加させ、乱反射のすえ、下方向に向けての放出することでフィルムを浮かせられるのです。

移動方向の制御も可能

光をあてる場所や角度を調節することで特定の方向に移動するように操作できる
光をあてる場所や角度を調節することで特定の方向に移動するように操作できる / Credit:Science Advances

今回の研究により、中間層でも飛翔可能な光駆動浮揚技術が開発されました。

また今回の研究では、カーボンナノチューブ層にあてる光のバランスを調節することで、フィルムを特定の方向に進ませられることも示されました。

研究者たちは照射する光をレーザーなどに変更することで、未踏の中間層の持続的な調査ができると考えています。