実際、技術もどんどん進歩しています。
昔は双子や三つ子が多く生まれるリスクもありましたが、今では1回の治療で1つの受精卵だけを使う方法が広まり、双子以上の出生率は3%未満にまで下がっています。
お母さんや赤ちゃんの安全にも配慮された進化です。
一方で、課題もあります。体外受精は高度な技術と設備が必要で、治療費も下がったと言っても高額です。
そのため、お金に余裕がある人や、制度が整った国に住む人だけが受けやすいという現状があります。
たとえば、日本では2022年から保険が使えるようになり、以前よりは身近になりましたが、世界にはまだ治療を受けたくても受けられない人がたくさんいます。
研究チームは、「体外受精はすべての人に平等に与えられるべき“権利”である」と主張しています。
もうひとつの問題は、「体外受精があるから、いつでも子どもができる」と考えてしまう人がいることです。
でも実は、年齢が上がるにつれて卵子の質や数は減ってしまい、体外受精の成功率も下がってしまうのです。
たとえば、35歳の女性で体外受精の成功率は約30%ありますが、40歳になると約15%、42歳では約10%にまで下がってしまいます。
つまり、「年をとっても大丈夫」と思っていると、うまくいかずに心や体、お金にまで大きな負担がかかってしまうことがあるのです。
体外受精はすばらしい技術ですが、それだけに頼るのではなく、「子どもを持ちたい」と思ったときに社会がしっかり支えるしくみも必要となるでしょう。
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元論文
How many infants have been born with the help of assisted reproductive technology?
https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2025.02.009
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。