なぜ見つからない?立ちはだかる“壁”

 では、もし第9惑星が存在するのなら、なぜ未だに誰も発見できないのだろうか。そこには、いくつかの大きな壁が立ちはだかっている。

 まず、観測データが絶対的に不足していることだ。そもそもカイパーベルトの天体は、軌道が非常に歪んでいるものが多く、一つの結論を導き出すには、まだデータが少なすぎる、と指摘する天文学者もいる。

 そして、最大の壁は、観測にかかる時間の長さだ。例えば、2017年に発見された準惑星候補「2017 OF201」の公転周期は、なんと約2万4000年。ある天体が重力的な影響を受けているかどうかを正確に知るには、少なくとも4〜5周分の軌道を観測する必要があるが、それは現実的に不可能だ。

太陽系の果てに「第9惑星」は存在するのか?天文学者を悩ませる、巨大惑星をめぐる大論争の画像2
(画像=画像は「ScienceAlert」より)

理論を揺るがす「安定した天体」の発見

 さらに近年、この「第9惑星」説にとって厄介な発見が相次いでいる。ハワイのすばる望遠鏡が発見した「2023 KQ14」をはじめとする、「セドノイド」と呼ばれる特殊な天体群だ。

 セドノイドは、太陽から非常に遠い軌道を公転しており、海王星の重力の影響をほとんど受けない。もし、提唱されているような巨大な第9惑星が存在するなら、当然その軌道は大きく乱されるはずだ。しかし、これまでに発見された4つのセドノイドは、いずれも驚くほど「安定した」軌道を描いている。

 これは、もし第9惑星が存在するとしても、これまで考えられていたよりも遥かに遠く、太陽から地球までの距離の500倍以上も離れた場所にないと辻褄が合わないことを意味する。

探査機では118年 — 果てしなき探索

 では、直接探査機を送って見つけることはできないのか。NASAの探査機「ニューホライズンズ」の速度を基に計算すると、もし第9惑星がその距離にあるとしたら、到達までにおよそ118年もかかってしまう。

 結局のところ、地上や宇宙に設置された望遠鏡を頼りに、その姿を捉えるしかない。幸い、観測能力は日々向上しており、新しい天体が次々と発見されている。それらのデータが積み重なることで、いつか太陽系の影に潜むものの正体が明らかになる日が来るかもしれない。

 広大な宇宙で繰り広げられる、この壮大な探索。その結末を我々は固唾をのんで見守るほかない。

参考:ScienceAlert、ほか

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