石破首相の「戦後80年談話」は党内の反発を受けて封じ込められたようだが、今回の選挙で躍進した参政党の歴史観もちょっと話題になっている。

@jvft4o2e 【参政党】先人達が命懸けで守ってくれたもの #参政党 #神谷宗幣 ♬ original sound – Oliver Collins

中身は戦中派老人によくある「大東亜共栄圏」賛美だが、ネット上では若者の「そうだったのか!」という反応が多い。今の世代は学校でほとんど近代史を学ばないので、白紙状態である。マスコミの左翼史観に疑問をもつと、戦中派レトリックに洗脳されやすいのだろう。

満州事変も日中戦争も侵略だった

神谷氏が街頭演説でも記者会見でも強調するのは「日本は領土を求めなかったので、大東亜戦争は侵略戦争ではない」という話だが、これは明白な誤りである。満州事変は国際法違反の侵略だった。その首謀者、石原莞爾は1931年5月にこう書いた。

満蒙問題の解決の唯一方策は之を我が領土となすにあり。之が為には其正義なること及これを実行するの力あるを条件とす。

これは柳条湖事件を起こす直前の文書だから、石原は意図的に満州を国民党政府から独立させて日本の領土としたのだ。その後の南進は彼の意図ではなかったが、それも侵略として国際連盟から非難され、日本は連盟を脱退した。

「日本軍が中国軍のテロから自衛するために戦争を始めた」というのもデマである。1937年の南京事件の直前に起こった「通州事件」の中国兵は日本のつくった傀儡政権(冀東防共自治政府)の治安部隊であり、これは日本軍の内紛だった。

「亜細亜モンロー主義」は日本人がアジアを支配する思想

日本人に主観的な「正義」がまったくなかったわけではない。石原は「五族協和」の東亜連盟をつくろうとし、徳冨蘆花は欧米列強の植民地支配に対抗する「亜細亜モンロー主義」を主張し、大川周明は日本がアジアの盟主となる「大アジア主義」をとなえた。