確率0.2%の軌道—ローブ教授が主張する“不自然さ”

 では、なぜローブ教授はこれほどまでに「エイリアン説」に固執するのだろうか。彼は、3I/ATLASには自然物では説明しがたい、いくつかの“不自然さ”があると主張する。

 第一に、その軌道だ。この物体は、太陽系の惑星とは逆向きに動く「逆行軌道」をとりながら、地球を含む内惑星の公転面と不自然なほど一致している。これが自然に起こる確率は、わずか0.2%しかない、と彼は計算している。

 第二に、その大きさだ。直径約19キロというサイズは、恒星間天体としては異常に大きい。「もしこれが自然物なら、すでに何百万もの同じような物体を発見しているはずだ。しかし、そうではない」というのが彼の主張だ。

 これらの根拠をもとに、ローブ教授は「10月29日に3I/ATLASが太陽に最接近する際、エイリアン侵略の恐怖が株式市場を暴落させるかもしれない」とまで警告を発している。

恒星間天体「3I/ATLAS」は“エイリアンの探査機”か?ハーバード大教授が警告する「地球到達」の具体的な時期とはの画像4
(画像=画像は「Daily Mail Online」より)

科学界の冷静な視点—「特別な証拠には特別な主張が必要だ」

 しかし、ローブ教授の主張する「不自然さ」には、多くの科学者が反論している。珍しい軌道や大きさは、広大な宇宙では起こりうること。それを直ちに「エイリアンの仕業」と結論づけるのは、科学的なプロセスを無視した飛躍だと批判されている。

 有名な科学の格言に、「特別な主張には、特別な証拠が必要だ」というものがある。現在、3I/ATLASが人工物であることを示す「特別な証拠」は、何一つ提示されていない。ローブ教授の主張は、あくまで状況証拠を組み合わせた一つの「仮説」に過ぎないのだ。

 ローブ教授自身も、「もし間違っていた場合の損失を考えれば、警告することには意味がある」と、哲学的な「パスカルの賭け」を引用して自らの立場を正当化している。しかし、これは裏を返せば、彼の主張が確固たる証拠に基づいたものではないことを認めているとも言えるだろう。

 謎の恒星間天体3I/ATLASは、今も静かに太陽系を進み続けている。それは、単に観測史上稀な巨大彗星なのか、それとも本当に何者かの意図が隠されているのか。

 科学界の大多数は、冷静な観測と分析を続けている。センセーショナルな警告に惑わされることなく、科学的な証拠が何を語るのかを我々は見守る必要があるだろう。

参考:Daily Mail Online、ほか

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