
旧約聖書に記された、神の力を宿す伝説の聖遺物「契約の箱(アーク)」。モーセが神から授かった十戒の石板を収めたとされるこの黄金の箱は、古代イスラエルの歴史から忽然と姿を消し、その行方は2500年以上もの間、歴史上最大の謎の一つとされてきた。
しかし今、イスラエルの考古学者チームが、このアークがかつて安置されていたとされる神殿「幕屋(まくや)」の遺跡を発見したと発表し、世界に衝撃が走っている。聖書の記述と驚くほど一致するこの発見は、歴史のミステリーに終止符を打つことになるのだろうか。
聖書の記述と一致する「寸法」と「方角」
この歴史的な発見があったのは、聖書に古代イスラエルの最初の宗教的中心地として記されている「シロ」の遺跡だ。発掘チームを率いるスコット・ストリプリング博士は、鉄器時代Ⅰ期(紀元前1200年~1000年頃)の巨大な石造りの建物を発見したと語る。
「我々が発見した建物は、聖書に記された幕屋の寸法と一致しています。建物は東西を向いており、聖書の記述通り、内部は2対1の比率で二つの部屋に分かれていました」
幕屋とは、イスラエル人がエジプトを脱出した後、エルサレムに神殿が建てられるまでの約400年間、アークを安置していた移動式の神殿のこと。その構造が、聖書の記述通りに目の前に現れたのだ。
大量の動物の骨—「生贄の儀式」の痕跡
発見はそれだけではない。遺跡からは、10万点以上もの動物の骨が発見された。そのほとんどが羊、ヤギ、牛のもので、特筆すべきは、その大半が「動物の右側」の骨だったという点だ。
これは、旧約聖書レビ記第7章に記された「生贄の右側は、祭司への捧げ物とする」という記述と、見事に一致する。
「これは偶然ではありません」と、ストリプリング博士は断言する。「ここで生贄の儀式が行われていた証拠は圧倒的で、聖書の記述との一致は、もはや無視できないレベルです」
さらに、骨と共に出土した陶器の年代も、幕屋があったとされる時代と一致しており、この遺跡がアークと深く関わっていたことを強く裏付けている。