つまり今回の研究は、体の表面では見えにくい老化のサインを、タンパク質という“内なる声”から探り出そうとしたのです。

その結果、ある驚くべきパターンが見えてきました。

老化は50歳前後で加速する!内臓に起こる変化

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中国科学院の研究チームが行った解析の結果、驚くべきパターンが浮かび上がりました。それは、多くの臓器において、50歳前後を境にタンパク質の変化が一気に加速するというものです。

具体的には、臓器に含まれる老化関連タンパク質の量や種類が、それ以前には緩やかに変化していたのに対し、50歳前後を転換点として急激に変化し始めることがわかりました。

つまり、身体の中では50歳前後を“転換点”として、老化のペースが新たな段階に入る可能性があるのです。

しかも、老化のスピードは臓器によって異なります。今回の研究で特に変化が顕著だったのが、大動脈や血管系でした。

血管は年齢とともに硬くなり、柔軟性が失われていきますが、その変化は自覚しにくいものです。しかし血管の老化は、心臓病や脳卒中といった重大な疾患のリスクにもつながります。

この結果は、「見た目や体感では元気に見えても、血管はすでに老化を始めている」ということを意味している可能性があります。

さらに注目されたのが、GAS6(ガスシックス)というタンパク質です。この物質は血液中に存在し、細胞の生存や炎症、老化と関係していることが知られています。

GAS6を若いマウスに投与する実験では、握力が低下したり、バランスが悪くなったりと、老化に似た症状が現れたといいます。このことから、GAS6は単なる“老化の指標”ではなく、老化を引き起こす引き金のひとつかもしれないと考えられています。

今回の研究では、このGAS6の量が50歳前後を境に急激に増加することが、大動脈や血漿(けっしょう:血液の液体部分)のサンプルから確認されました。この指標も老化が50歳前後で急激に進行する可能性を示唆しています。