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「もう50歳だから新しいことは無理」そんな固定観念が崩れ始めています。

実際に、日本では50代以上のシニア層による起業・副業が急速に拡大しており、社会に新たな活力をもたらしています。

「50歳からの起業はマインドが9割 稼げるココロの法則39」(高橋貴子 著)産業能率大学出版部/

数字が語るシニア起業の現実

2022年度の就業構造基本調査によると、副業者数は10年前と比べて4割強も増加し、その牽引役となっているのが65歳以上の高齢者層です。特に注目すべきは、この世代の副業者数が10年前から倍以上に増加している事実です。

起業年齢の分布を見ても、日本では50代以上のシニア層が起業の中心を担っており、2017年から2022年にかけて70代以上の起業家のシェアも高まっています。これは単なる統計上の変化ではなく、日本の労働市場における大きな構造変化を示しています。

この現象の背景には、複数の社会的要因があります。まず、65歳までの雇用延長が制度化される一方で、正規雇用での働き続けることが困難になった後の選択肢として、多くのシニアが複数の仕事を組み合わせる働き方を選んでいます。

また、長年培ってきた専門知識や豊富な人脈、そして経験に裏打ちされた判断力といった、シニア世代ならではの強みが市場で高く評価されるようになりました。さらに、デジタル化の進展により、少ない初期投資でも事業を始められる環境が整ったことも大きな要因です。

従来の起業とは異なり、シニア起業には独特の特徴があります。多くの場合、本業を持ちながら副業として事業を開始し、段階的に規模を拡大していくスタイルが主流です。リスクを抑えながら自分の可能性を試せるこのアプローチは、家族への責任を持つシニア世代にとって現実的な選択肢となっています。

事業内容も多様化しており、長年の経験を活かしたコンサルティング業から、地域の課題解決を目指すソーシャルビジネス、さらには新しい技術を取り入れた革新的なサービスまで、幅広い分野で活躍するシニア起業家が増えています。

社会に与える好影響