アメリカでは、試用期間があり、多くの企業が3〜6ヶ月の研修期間を設けている。この期間は単なる“トレーニング”ではなく、実質的に「長い面接」のように機能する。

たとえばGoogleやAmazonのような大手企業でも、最初のプロジェクトで成果が出なければ早期に契約終了となるケースは珍しくない。人材流動性が高いアメリカでは、即戦力性と適応力が重視され、初速で評価を獲得できない者は容赦なく弾かれる職場もある。

中国はさらに厳しい。都市部のホワイトカラー層にとって、「35歳定年説」は現実味のある脅威だ。多くの企業が35歳を超えると未経験職種への転職は困難になるだけでなく、大手IT企業では40歳前にリストラされるケースも珍しくない。

このため、若いうちから猛烈に働き、短期間で成果を出して昇進・昇給を目指す働き方が一般化している。最初の3年で昇進できなければ、以後は“閑職”に回されることもあり、実力主義と年齢差別が混在する過酷な環境となっている。

つまり、「若手のうちにパフォーマンスを見せろ」という圧力は、むしろ日本よりも強烈ですらある。

「初速主義」は悪いことか?

当然ながら、「初速だけでキャリアが決まるのは不公平だ」という反論もある。

人には向き・不向きや適応速度がある。

スロースターターの人材を早期に切り捨てるのは損失。

プライベートや健康とのバランスも必要。

こうした意見はその通りであろう。しかし、残念ながらこの世は競争社会であり、企業の評価システムには「個人の事情を考慮する余裕」はないのだ。

組織は“早く結果を出す人材”を求める構造になっている。だからこそ、評価されやすい若いうちに“信用資本”を積み上げておくことが、長期的に見て最もリスクが低く、報われやすい戦略となる。

これは個人レベルで文句を言っても変えることができない。そのため、「自分のペースでのんびりやらせて」ではなく「若手のうちに死にものぐるいで食らいつく」という気概が求められる。