しかし現実には、会議で堂々と「それはどういう意味でしょうか」と質問する人は少ない。多くはその場では黙り、後になって「結局あれってどういうこと?」と個別に確認したり、陰で「あの発言おかしくない?」と不満を漏らしたりする。
その理由は「恥ずかしい」「無能だと思われたくない」「空気を壊したくない」といった心理的ハードルがあるからだ。それ自体は人間として自然な反応であり、理解出来なくはない。
だが、わからないままにすることで発生するリスクは想像以上に大きい。たとえば、「実はあの時、理解していなかった」「誤解してしまった」というメンバーがいると、キャッチアップに無駄な時間やエネルギーがかかる。
一つひとつは小さなズレでも、積み重なることでプロジェクト全体のコストが膨らむことになる。
理想的な会議の形
上記事項を踏まえて、筆者が持つ法人の会議で心がけていることは下記のとおりだ。
1つ目に事前に資料や内容を共有する。そうすることで、「この内容については自分は違った意見を持っていることを伝えよう」とか「用語がわからないから調べてから参加せねば」と各々が準備できる。実際、会議で出てくるのは「調べても理解できない事項」「違った視点での意見」ばかりなので一切の無駄がない。
2つ目に議事録を共有することだ。特に最近ではAIボイスレコーダーを使って、会議を録音し終了後に文字起こしをしたものをシェアすればその場で出た結論を見直すことができて便利だ。
3つ目に質問者を正しく評価することだ。価値が高い意見とは話し手が見落とした多面的な視点である。筆者もこうした記事を書いていて反論をもらうことはよくあるが、「その発想はなかった」と感じた時はありがたいと思う。会議で発言することで参加者全員で様々な視点を共有することになるので、まさに「会議をする価値」そのものと言える。
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「わからない」が言えない人は信用されない。わからないまま持ち帰られると、仕事は遅いし個別フォローも必要になり、大事な仕事は任せてもらえなくなる。事前に調べたり意見を出す努力をした上で「わかりません」とハッキリ言う人はズレないので信用されるのだ。