特に、バルバドスでは近年「ブラーミニ・ブラインドスネーク(インドナミヘビ)」という外来種が持ち込まれており、見た目がほとんど同じなのです。
発見された個体はすぐに西インド諸島大学へと運ばれ、顕微鏡を用いた詳細な観察が行われました。
その結果、外来種ではなく、20年近く科学的に見失われていた正真正銘のバルバドス・スレッドスネークであることが確認されたのです。
絶滅寸前の固有種と、失われゆく森の物語
バルバドス・スレッドスネークは、視力を持たない「盲目ヘビ」の一種で、地中や落ち葉の中などに潜むため非常に発見が困難です。
事実、1889年の記録以降、科学的に確認された目撃例は数件しかなく、今回の発見は約20年ぶりの快挙でした。
このヘビの繁殖にもまた、絶滅リスクの高さが表れています。
バルバドス・スレッドスネークは有性生殖を行い、メスが産む卵は1個のみ。
それに対して、先ほど述べた外来種のインドナミヘビは単為生殖が可能で、1匹のメスだけでも大量の子孫を残すことができます。
このような違いが、外来種の拡散と固有種の衰退に拍車をかけているのです。

さらに深刻なのは、生息環境の破壊です。
バルバドス島では、16世紀の植民地化以降、大規模な農地開発が行われてきました。
その結果、現在残されている原生林は、島全体のわずか2%程度しかありません。
今回のヘビが見つかった森林も、スコットランド・ディストリクトと呼ばれる未開発地域に限られた貴重な自然の一部です。
このような生息地の減少と競合種の影響により、バルバドスではすでにいくつもの固有種が絶滅しました。
たとえばバルバドス・スキンクやバルバドス・レーサー(固有のヘビ)は、インドマングースの導入によって姿を消したと考えられています。
今回のスレッドスネーク再発見を受けて、調査チームは今後も島内の森林を重点的に調べ、分布や生態の詳細を把握することを計画しています。