黒坂岳央です。
「世の中コネ」と聞いて、多くの人は眉をひそめるだろう。何より、自分自身が昔はそうした運要素をとても嫌っていた。
縁故採用、天下り、裏口入学など、そうした負のイメージは今も強く残っている。一部において地方の家族経営の企業や、親の地位や出身校のつながりなど、生得的な人脈が力を持つ場面も確かにある。
だが、現代社会におけるコネの多くはそうした特権的なものではない。実際には、日々の行動と信用の積み重ねによって、誰でも構築し得る戦略的資産なのだ。

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コネは実力で作るもの
「アメリカは実力主義社会」とよく言われる。たしかに飛び抜けたスキルや成果があれば評価されやすい風土ではある。だが、その実態は「コネ社会」と言っても過言ではない。
米国労働省の調査によれば、求人全体のうち約70%が「非公開求人」であり、その多くがネットワーキングや内部推薦(リファラル)を通じて埋められている。また、LinkedInの調査でも、企業が最も信頼する採用経路は「社員の紹介」であり、書類選考を通過する確率は通常の応募者より約9倍高い。
つまり、実力があっても「紹介されない人材」は評価される場にすら立てず、逆に強固な人脈があれば多少スキルに劣ってもチャンスを得られるのが現実である。
外資系転職でもリファレンスチェックといって、前職の上司などに「本人の働きぶりを確認する」ということは珍しくない。そのため、やめ方を間違えると上司や同僚に酷評されてしまい、そうなると転職ができない。昨今、日本で受け入れられる「退職代行」なんて使って強引に退職してしまえば悪評がついて転職は難しいだろう。
筆者自身、昔MBAに出願した際、推薦状が必要と言われて愕然とした経験がある。自分は勤務先のCFOに推薦を依頼し、快く引き受けてもらった(結局入学はしなかったが)。CFOとは日常的に仕事で深く付き合いがあり、二人で飲み会に行くなど信頼の積み重ねがあった。推薦状はその結果だと思っている。