「金利の上がりやすさ」はどの銀行でも同じ
現在の住宅ローン金利の水準はどう捉えるべきなのか。
「前提として、現在の日本の住宅ローン金利は非常に低いです。固定金利は2%前後、変動金利は0.6~0.7%くらいの水準であり、上昇しつつあるとはいえ1%を切っている状態です」(塩澤氏)
では、これから住宅ローンを借りようと考えている人にとっては、ネット銀行を使うメリットは薄まりつつあるといえるのか。
「住宅ローンを選ぶ際には、ネット銀行なのかメガバンクなのか地銀なのかといったカテゴリーに関係なく、金利が一番お得なところを選べばよいと思います。その時たまたま一番お得なのがネット銀行であればネット銀行から借りればよいですし、地銀が一番お得なら地銀で借りればよいでしょう。単純に金利ランキングの上位の顔ぶれがネット銀行から他の銀行に移っているだけですので、ユーザー側からすると、しっかりと比較して良いものを選びましょうという原理原則は変わりません。
経営体力などを加味してネット銀行は避けたほうがよいのかといったことも、あまり過敏になる必要はないと思います。『ネット銀行だと金利が急激に上がる可能性があるのではないか』と心配する方もいるかもしれませんが、変動金利は基本的には日銀が設定する金利次第なので、例えば日銀が0.25%利上げすれば、どの銀行も一律で金利を0.25%上げることになります。つまり『金利の上がりやすさ』というのは、変わりません。
ですので、今現時点でもっとも住宅ローン金利が安い銀行を選択して、返済を続けていけばよいというのが基本的なスタンスです。もし万が一、仮に銀行がどんどん金利を上げるようなことをしてくれば、他の銀行で借り換えれば済む話ですし、銀行側とすれば自分たちだけがどんどん金利を上げれば流出が増えて住宅ローン残高が急減するので、無茶なことはできません。銀行間での緊急関係、競争関係がありますので、過敏になる必要はないでしょう」(塩澤氏)
気になるのは、ネット銀行の今後だ。経営的には厳しい環境に置かれることになるのか。
「これからポイントとなってくるのは、預金をいかに低いコストで集めるかという点です。5月に住信SBIネット銀行がNTTドコモの子会社となりドコモ傘下に入ることが発表されましたが、住信SBIネット銀行としてはドコモユーザーを取り込んで預金集めをするという狙いがあるのだと推察されます。auじぶん銀行も同じような動きを見せており、銀行のリアル店舗に対抗するかたちで携帯電話の顧客基盤を活用するといった戦い方も出てくるかもしれません。このようにネット銀行はなんとかして預金を集めようという動きを強めていくでしょう」(塩澤氏)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=塩澤崇/MFS取締役CMO)