●この記事のポイント ・低い金利を設定して住宅ローン残高を積み上げてきたインターネット銀行が、逆風にさらされている ・ネット銀行よりメガバンクの住宅ローン金利のほうが低いケースも ・住宅ローンを選ぶ際には、銀行のカテゴリーに関係なく、金利が一番お得なところを選べばよい

 これまでメガバンクや地方銀行などより低い金利を設定して住宅ローン残高を積み上げてきたインターネット銀行が、逆風にさらされている。日本銀行によるゼロ金利解除・金利引き上げや貸出増加支援資金供給制度の新規貸し出しの終了がその原因。すでにネット銀行よりメガバンクの住宅ローン金利のほうが低いケースも出てきているが、「借りる側」はどのような行動をすべきなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

ネット銀行が巻き込まれた競争

 住宅ローンの一括比較や診断サービスを提供するサイト「モゲチェック」を運営する株式会社MFS取締役CMO・塩澤崇氏は次のようにいう。

「『金利のある時代』に転換したことで、ネット銀行が預金集めに苦労しています。銀行は預金を原資として住宅ローンの貸し付けを行いますが、その原資を集めるコストが上がったため、住宅ローン金利を高く設定せざるを得なくなっています。今までローコスト運営を続けてきたネット銀行ですが、その優位性が薄まっているというのが要因の一つ目です。

 その兆候が顕著になり始めたのが今年4月です。決算期の締めにあたる3月末までは貸し付け残高の積み上げ努力を続けていましたが、4月から新年度が始まり、新たな事業計画がスタートするのに合わせて新しい金利を設定し、一斉に金利を上げました。日銀が貸出増加支援資金供給制度の新規貸し出しを6月に終了すると1月に発表した影響も大きいでしょう。そこを見据えて各行が4月からブレーキをかけるという意思決定をしたのだと思われます」

 ネット銀行が預金を集めにくくなった理由は何か。

「やはり日銀による資金供給制度が終わることが大きいと考えられます。これまでは数十億~数百億円を調達できたものができなくなり、住宅ローンの原資となる預金は『金利のある時代』になると比較的高いコストを負担しないと集められなくなっています。多くの銀行が夏のボーナスシーズンに合わせて高い金利で定期預金を集めようとキャンペーンを展開していますが、そうした競争に巻き込まれてしまうわけです。

 一方でメガバンクや地銀は、多くの人が給与振り込み口座やクレジットカードの決済口座を持っているので、銀行が預金金利のキャンペーンなどを行わなくても自動的に預金が集まってくるわけです。それ以外の銀行は高い金利を払わないと預金を集められないという戦い方を強いられています」(塩澤氏)