また、マクロン大統領のパレスチナ国家承認という宣言は、ガザ地区でのイスラエル軍の戦闘と、パレスチナ人への人道危機に対して、イスラエルに圧力を行使するという意味合いが強い。すなわち、国家承認という非常に国際法上、政治・外交上、高度な判断が必要なテーマに対して、パレスチナ人への人道的支援を阻止するイスラエルへの制裁といった道義的理由が大きな契機となっていることだ。また、ヨルダン川西岸地区の状況は、ここ数ヶ月、イスラエルの入植地によって悪化し続けている。このような状況下でパレスチナの国家承認は「時期尚早」(メローニ伊首相)と言わざるを得ないのだ。
2015年に先駆けて国家承認したバチカン市国の国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は、日刊紙「ラ・レプブリカ」(28日付)で、「2国家共存が唯一の実行可能な道だ」と述べ、マクロン大統領の国家承認発言を歓迎している。バチカンは長年、イスラエルとパレスチナの2国家共存こそ、聖地パレスチナの平和に向けた最善の策だとの立場を取ってきた。 なお、ローマ教皇レオ14世は今月21日、ガザ紛争についてパレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領と電話会談をし、2015年1月21日に調印され、2011年1月2日に発効した聖座(バチカン)とパレスチナ自治政府間の外交合意10周年を祝っている。
ちなみに、「信仰の祖」アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の3宗派代表が2014年1月8日、ローマ教皇フランシスコの招きでバチカン教皇庁に結集し、中東の和平実現のために祈祷会を開催したことがあった。フランシスコ教皇のほか、、ユダヤ教代表のイスラエルのペレス大統領、そしてイスラム教代表のパレスチナ自治政府アッバス議長の3人がバチカン内の庭園に集まった。
フランシスコ教皇は当時、「憎悪と暴力の悪循環を突破するためには“兄弟”という言葉がある。頭を天に向け、われわれの共通の父親を見つけることができれば、われわれは兄弟だと分かるのではないか」と述べたことがある。現実はそんなにシンプルではないかもしれないが、解決策は結局そこに帰着するのではないか。