伝説は真実か?研究者が追う小人族の痕跡

 この「小人伝説」は、単なる作り話ではないのかもしれない。インド国立高等研究所のシュリクマル・メノン氏をはじめとする研究者たちは、同様の伝説が南インドの広範囲にわたって存在することを発見している。メノン氏は、伝説には真実の核があり、数千年前に実際に小柄な人々が存在した可能性を指摘。インドネシアのフローレス島で発見された古代人類「フローレス原人」との関連性さえ示唆している。

 しかし、考古学的な調査は難航している。これまでの発掘では、建造物の内部から人骨は一切発見されておらず、丘から見つかったのはわずかな土器の破片と原始的な石器のみ。作り手に関する直接的な手がかりは、何一つ残されていないのだ。

忘れられた遺跡の危機と未来

 唯一の手がかりは、いくつかの石板に残された赤い顔料(オーカー)で描かれた岩絵だ。イノシシや鹿、そして人間らしきものが描かれたこれらの絵は、紀元前700年~500年頃のものとされ、これが建造物全体の年代推定の根拠となっている。しかし、建造物自体は岩絵よりもずっと古くから存在していた可能性も否定できない。

インドの辺境に「小人の村」が実在した? 1000の石の家を建てた“失われた種族”の正体とは?の画像4
(画像=BySudeep m–Own work,CC BY-SA 3.0,Link)

 この貴重な遺跡は、観光ルートから大きく外れた辺境にあるため、年間わずか100人ほどしか訪れない。そのため保存状態は悪化の一途をたどり、宝物を狙う盗掘者の被害にも遭っている。

「古代の人々が多大な努力を払って築いたこの場所を、我々は倍の努力を払って保存しなければならない」と考古学者は訴える。忘れられた「小人の村」が、その謎を解き明かす前に永遠に失われてしまわぬよう、早急な調査と保護が求められている。

参考:Arkeonews、ほか

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