アレルギーを「発症させない」未来の治療へ
現在のアレルギー治療は、喘息の吸入器や花粉症の抗ヒスタミン薬など、症状を管理する対症療法が主流だ。しかし、私たちが本当に必要としているのは、アレルギーの発症そのものを防ぐ、根本的な解決策である。
もちろん、すべての家庭に牛小屋を置くわけにはいかない。しかし、科学者たちは、「ファーム・エフェクト」をもたらす特定の微生物や分子を特定することで、アーミッシュの環境が持つ保護効果を再現できると考えている。
例えば、幼少期の子供の免疫システムを「訓練」するための、プロバイオティクスや点鼻スプレー、さらにはホコリ由来の治療薬といった、未来の予防法を開発できるかもしれないのだ。
アリゾナ大学の専門家、ドナータ・ヴェルチェッリ氏は言う。
「すべての家庭に牛をあげることはできないでしょう。しかし、私たちはこれらの伝統的で安定した環境から、どのような物質や曝露が必要なのかを学んでいます。それがわかれば、この方針に沿った予防戦略を立てるのに、何の障害もないはずです」
家畜小屋のホコリという、ありふれたものが何百万人もの子供たちを救うかもしれない。この希望に満ちたアイデアを実現するため、研究者たちは今、どの微生物が最も強い保護効果をもたらすのか、そしてその治療法が安全で使いやすいものであることを確かめるための研究を進めている。
私たちが「清潔」と引き換えに手放してしまったものが、案外、一番の薬だったのかもしれない。
参考:ZME Science、ほか
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