なぜなら、粒子がトンネルを通過中に何らかの方法でそれを観測しようとすると、粒子の微妙な量子的状態が壊れてしまい、本来のトンネルの性質を捉えることができないからです。
そのため、トンネルの「内部」は完全なブラックボックスのような存在であり、粒子の動きや状態を直接知る術はこれまでありませんでした。
こうした状況の中、科学者たちはトンネルの中で粒子が特別な動きをしている可能性について理論的に検討を進めてきました。
特に近年注目されていたのは、「粒子がトンネルの中でエネルギーを蓄えたり、何らかの未知の相互作用を起こしたりしているのではないか」という仮説でした。
この仮説がもし本当であれば、私たちがトンネル現象をこれまでより深く理解できるばかりでなく、トンネルを利用する様々な先端技術を進化させることが可能になるかもしれません。
しかし、こうしたトンネル内部の仮説を実験的に検証することは極めて困難で、長年の課題として残されていました。
そこで今回の国際研究チームは、「トンネル内部で電子がどのようにふるまい、どのような状態を経由しているのかを明らかにする」ことを大きな研究目的として掲げました。
この目的を達成するために、国際的な協力のもと、実験と理論の両方を駆使してこの難問に挑戦しました。
そこで今回研究者たちは精密な実験で検証することによって、トンネル効果のブラックボックスを開ける試みに挑みました。
量子トンネル、実は瞬間移動じゃなかった――電子は壁の中でUターンしていた!

量子トンネル効果の謎を解明するために、研究チームは電子が原子の内部からどのように飛び出してくるのかを詳しく観察することにしました。
ただし、電子そのものを直接目で見ることは不可能なので、間接的にその振る舞いを調べる必要があります。
そこで使われたのが強力なレーザー光です。