つまり、「買い直す前提」で住宅を選んでいる。リセールバリュー(売却時の価値)を意識し、将来の流動性や市場性も計算に入れて購入を決めている。これが令和の住宅戦略なのである。

住宅に限らず、モノの所有の価値観も同様に変化している。すでに家以外でもこの現象は当たり前になった。車、スマホ、パソコンなどは「古くなったらメルカリで売却し、その資金でまた買い直す」というリセール前提戦略を考えている人は昔に比べて随分増えたはずだ。

買い替える前提で買う

「何度も家を買い替えるのは、手数料や税金がもったいない」との意見もあるだろう。確かに、売却時には仲介手数料や譲渡所得税などのコストが発生する。筆者も何度も新しい家の購入時にこの点、そろばんを弾いた。だが、それを上回る資産価値の上昇や、生活の質の向上が見込める場合、それらは必要経費にすぎない。「トータルだと経済的にもQOL的にも得」という構図はそれほど難しくはない。

また、「不動産価格が下がったらどうするのか」という懸念もある。これに対しては、資産価値の下落リスクが少ない立地を選ぶこと、買うときに「出口戦略」を明確に持つことで対応が可能だ。そもそも、日本の不動産価格は全国平均では停滞気味でも、都市部の優良立地においては上昇傾向にあるのが現実だ。人口減少の中でも、価値のあるエリアは今後も残り続ける。

もちろん、「一生住む家がほしい」という価値観も否定されるものではない。だが、柔軟に住まいを見直すという選択肢があることは、これからの時代を生きるうえで大きな武器になるだろう。

これからの住宅購入は、「買って終わり」ではない。「いずれ売る」「貸す」「住み替える」可能性を含んだ設計であるべきだ。だからこそ、購入時点で将来の出口戦略を考える視点が重要になる。

「マイホームは一生に一度」というこれまでの感覚は終わりを告げた。その先には、より自由で合理的な住まいと暮らしが待っているのだ。