「鰻は蒸すところからご用意しますので、少しお時間をいただきます」との店員の言葉に頷きつつ、ゆったりとした時間が流れていきます。

ほどなくして運ばれたキャベジンは、塩加減も程よく、冷たさが心地よい一皿。猛暑のなか歩いてきた身体に染み入る優しさがあります。

キャベジン。程よい塩加減、ひんやりした浅漬け。

いよいよ主役、鰻重の登場

そして、待望の鰻重が登場。肝吸い、奈良漬、季節の果物まで添えられたお膳は、見た目にも贅沢そのもの。蓋を開ければ、香ばしい炭火の香りとともに、一尾半の鰻が美しく折りたたまれて現れます。

鰻重の登場。奥の夫の鰻重の山椒粉はかけすぎですよね?

テーブルの端に置かれた瓢箪型の山椒入れ。香りを損なわぬよう、少量をまんべんなく振りかけるのが私流。夫の重を横目で見ると、ややかけ過ぎの気配。薬味は「控えめ」が肝要です。

鰻重のロは、一尾半。折り曲げられられるくらいのボリュームです。立ち昇る香ばしい炭火焼の香り!

フクロウの絵が楽しい、レトロなランプも店内廊下に。

ひと口いただけば、ふっくらとした鰻の身と香ばしさが舌の上でとろけ、タレの染み込んだご飯とともに、至福の世界へ。気がつけば、夫婦ともに無言で箸を進め、完食していました

地下道の涼風とともに 帰り道は、ホテルの地下からJRや銀座線新橋駅に直結する地下通路へ。行きのじりじりと照りつける日差しとは打って変わり、涼やかな通路を通りながら、「やっぱり鰻って元気が出るね」と夫婦でしみじみ。

第一ホテル東京から新橋駅までの地下通路。地上よりはずっと涼しい!!

暑い夏の日。季節の風物詩としての鰻重を、ただの「精をつける食事」にとどまらず、江戸から受け継がれた文化として味わってみてはいかがでしょうか。きくかわの一膳は、そんな時間を提供してくれます。

神田きくかわ 第一ホテル東京店