「負のうるう秒」とは何か?
「たった1ミリ秒」と侮ってはいけない。この些細なズレは、GPSナビゲーション、金融取引、通信システムなど、超精密な時間管理に依存する現代技術にとっては致命的になりかねない。
そこで、このまま地球の自転加速が続けば、国際的な時間管理者は「負のうるう秒」という前代未聞の手段に打って出る可能性がある。
これまで、地球の自転は長期的には遅くなる傾向にあった。そのため、原子が刻む極めて正確な「原子時」と、地球の自転に基づく「天文時」のズレを修正するため、1972年以降、時々1秒を追加する「うるう秒」が実施されてきた。
しかし今回はその逆だ。加速する地球に合わせて、時計の針から1秒を「引く」という、歴史上誰も経験したことのない調整が必要になるかもしれないのだ。この議論は、気候変動による氷床融解が地球の自転を加速させるという数年前からの指摘もあり、再び熱を帯び始めている。
巨大テック企業が猛反発する理由
この「うるう秒」という仕組みに、声高に反対している者たちがいる。Meta、Google、Amazon、Microsoftといった、世界のITインフラを支える巨大テック企業だ。
彼らは、「うるう秒が導入されるたびに、コミュニティは壊滅的な打撃を受ける。利益よりも損害のほうがはるかに大きい」と主張する。その懸念は杞憂ではない。2012年には、うるう秒の処理が原因で、大手掲示板サイトRedditが大規模なシステム障害に見舞われたという実例もある。
これまででさえ厄介だった「うるう秒」。ましてや、一度も実施されたことのない「負のうるう秒」が何を引き起こすかは、誰にも予測できない。Metaは、「大規模にテストされたことのない負のうるう秒は、タイマーやスケジューラーに依存するソフトウェアに“壊滅的な影響”を与える可能性がある」と、強い警告を発している。
地球の物理法則と、現代文明を支えるデジタル世界の論理。その間で揺れ動く「1秒」の行方から、目が離せない。
参考:IFLScience、ほか
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。