
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))
太陽系の果て、冥王星よりもはるか遠い場所で、新たな準惑星候補がその姿を現した。日本のすばる望遠鏡が発見したこの天体は「アンモナイト(2023 KQ14)」と名付けられ、その奇妙な軌道が、長年天文学者を悩ませてきた「第9惑星(プラネット・ナイン)」の存在仮説に、大きな疑問を投げかけている。
太陽系の果てに潜む「セドノイド」の新メンバー
「アンモナイト」は、日本の研究チームが主導し、ハワイに設置されたすばる望遠鏡によって2023年3月に初めて検出された。その愛称は、化石(FOSSIL)にちなんだ観測プロジェクトから発見されたことに由来する。
この天体は、海王星のはるか外側を極端な楕円軌道で公転する「セドノイド」と呼ばれる特殊な天体群に分類される。セドノイドの名は、2004年に発見された同種の天体「セドナ」から来ており、アンモナイトの発見によって、そのメンバーは4つとなった。
セドナが太陽に最も近づく時(近日点)でさえ、太陽と地球の距離の約76倍(76天文単位)も離れているのに対し、アンモナイトは最も近い時で約66倍、最も遠い時では約252倍もの距離を旅している。まさに、太陽系の最果てに潜む孤独な天体なのだ。
なぜ「第9惑星」の存在が揺らぐのか?
この発見がなぜ重要なのか。それは、天文学界の大きな謎である「第9惑星仮説」の根拠を揺るがすからだ。
第9惑星仮説とは、2016年に提唱されたもので、太陽系の外縁部にある奇妙な軌道を持つ小天体群は、その先に潜む未発見の巨大な惑星(第9惑星)の重力によって操られている、という考えである。
これまでに見つかっていた3つのセドノイドは、その軌道が奇妙なことに太陽系の一方の側に偏って集まっていた。この「軌道の偏り」こそが、第9惑星が存在する有力な証拠の一つとされてきたのだ。