この見解では、星が誕生後、ある一定の安定状態に達した後にのみ複雑な有機分子が形成されるのではなく、生命の出現に不可欠な複雑な分子の出現頻度と複雑さは、惑星系の形成過程のあらゆる段階で顕著に見られるのだ。これらの分子は宇宙に広く存在し、既に星間分子雲で形成されている可能性がある。そして、新たに形成される惑星系に吸収され、時間の経過とともにより複雑な分子へと進化していくわけだ。

メタノールのような単純な有機分子は、恒星の前駆物質である濃いガスと塵の雲の中で既に検出される。好条件下では、オリオン座V883星で今回発見された物質の一つであるエチレングリコールのような、さらに複雑な化合物もそこで生成されている。アミノ酸、糖、DNAとRNAを構成する核酸塩基など、生物学的プロセスに不可欠なさらに複雑な有機分子は、太陽系の小惑星、隕石、彗星で既に検出されている。

以上、ドイツ民間放送ニュース専門局ntvの科学欄(2025年7月24日)で掲載されていた「宇宙で生命起源の証拠を発見」の概要をまとめた。

科学者はビックバーンは誰が起こしたのか、その目的は何か、等はテーマにしない。現在の宇宙天文学の対象はビックバーン後、生まれた宇宙空間だ。そして生命体の起源だ。最大の謎は宇宙空間を覆っている暗黒物質だ。ひょっとしたら、その暗黒物質は「生命の構成要素は個々の惑星だけでなく、宇宙全体で形成されている」という今回の発見にその謎を解くカギがあるのではないか。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年7月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。