儀式ではまず主催者側の海上自衛隊を代表して斎藤聡海上幕僚長が挨拶した。

「アワー氏の海上自衛隊への貢献は偉大であり、これまで師事した隊員はいまや日本の海上防衛戦略の中核を担っている」

その後にすぐアワー氏への追悼を述べたのは在日アメリカ海軍司令官のイアン・ジョンソン少将だった。

「アワー氏はきわめて貴重なアメリカ海軍と海上自衛隊の信頼できる橋渡し役だった。アワー氏自身の長年の現役の海軍軍人としての貢献も偉大だった」

アワー氏に直接の教育や指導を受けた日本側の代表としては現役の衆議院議員である長島昭久氏が謝意と弔意を述べた。長島氏は現在、石破政権での国家安全保障担当の首相補佐官でもある。同氏は20数年前、テネシー州ナッシュビルのバンダービルト大学や同大学付属の「日米研究センター」で合計2年ほどもアワー氏の薫陶を受けた。

「私の今日あるのはアワー先生のお陰だといえる。ナッシュビルでは私ども一家がアワー夫妻に全面的にお世話になった。そこを去る際にはアワー氏は最後まで見送りに来てくれて、私と妻は感激と感謝のあまりに思わず号泣した」

アワー氏の遺骨の一部は本人の遺言どおりに艦上から星条旗に包まれた壺に入れられ、日本の海に静かに葬られた。その水葬はアワー氏の遺族全員が脇に立ち、見送った。

アワー氏は実子がなく、ジュディ夫人とともに早い時期に日本生まれのテイイチロウさんを長男として、韓国生まれのヘレンさんを長女として、そして米国生まれのジョンエドさんを次男として養子とし、育てた。この葬礼でも3人の成人した子供たちはそれぞれ父親への追悼と、この葬礼への感謝の意を述べる挨拶をした。テイイチロウ、ヘレンさんの両人はともに学校教員、ジョンエドさんは米国海兵隊の現役少佐を務めている。

3人とも既婚で、この日は夫人が最近、出産したばかりのジョンエドさん以外は配偶者とともに参列した。またテイイチロウさんの子供、つまりアワー夫妻の孫にあたる4人がそれぞれ黒い喪服で葬列に加わり、最後まで礼儀正しく身を処していたのが印象的だった。14歳の長男のノア、13歳の長女ソフィア、11歳の次女シャーロット、7歳の三女リディアという名の孫たちだった。アワー家のよき伝統が確実に保たれていくと感じさせられる情景だった。