北陸新幹線について京都にとって地下水は文化そのもので、地下水に異変があれば千年の悔いを残すと言うようなカルト的な言語で冷静な議論ができなくなっているのは残念だ。
たしかに、扇状地に広がる京都では比較的良質な地下水に恵まれていたので、江戸や大阪のようには飲み水に困ることはなかった。また、豆腐のような食品にも好都合だった。
しかし、現代の京都の水道水は、蹴上・松ヶ崎・新山科浄水場では42–43 mg/Lほどで、大阪や東京が50 mg/Lであるのに比べると軟水だが、名古屋市の水道水が20 mg/Lであるのに比べれば硬度が高い。この名古屋の水道水は京都で名水といわれる井戸にほぼ匹敵するから、名古屋の水道水なら京都の伝統食品にぴったりだ。
ちなみに珊瑚礁の島である沖縄では硬水で、那覇市の水道水は100 mg/Lほどだ。しかし、飲み水としては硬水の方がおいしい。ヨーロッパの主要なブランドだと、エヴィアンが304、ヴィテル(Vittel)が768 mg/L、コントレックスが1468 mg/L、炭酸水だとペリエが415 mg/L、サンペリグリーノが734 mg/Lである。
日本人がきれいな水を安価で豊富に使えるようになったのは、ダムの建設で水利権(すいりけん。みずりけんではない)を生み出し、水道事業が水処理技術の進歩で近代化されたがゆえである。
世界一の海水淡水化技術も活用している。それから以外に大きいのがミネラルウォーターやペットボトル飲料の流通網が確立して、渇水になっても飲み水に困らなくなるなどしたことも、技術者たちの奮闘の結果であり、これからもその努力が必要だ。
それを、「命の水」だとか「地域の文化」だとか「神様」だとかいう客観的な評価になじまない目くらましを持ち出して、曖昧な議論を振り回して気儘な利己主義で真摯な努力を愚弄する人たちを軽蔑する。
日本は雨量が多く小さい河川が全国にあるので水資源量は豊富である。しかし、短い河川は渇水には弱い。だから、福岡や高松では渇水になるとカレーライスがメニューから消えたほどである(冷水をおかわりされないため)。