「呼吸」の特性を日常生活で意識している人はほとんどいません。
ところが私たち人間は、1日に約2万9000回も呼吸しています。
呼吸に対する理解が少しでも深まり、それを活用できるなら、私たちは大きなメリットを得るはずです。
兵庫医科大学 生理学 生体機能部門に所属する中村 望氏ら研究チームは、息を吸う瞬間に集中力が低下することを発見しています。
この集中力の低下は、記憶を思い出すプロセスにも影響を与えると考えられます。
研究の詳細は、2022年9月30日に学術誌「Cerebral Cortex Communications」に掲載されました。
目次
- 息を吸う瞬間に集中力が低下し、記憶力にも影響する
息を吸う瞬間に集中力が低下し、記憶力にも影響する
呼吸のリズムや位相の違いは、身体や脳にさまざまな影響を及ぼすことで知られています。
実際、私たちが視覚や聴覚、触覚などから情報を得たり、体を使って運動したりするときには、脳活動に応じて呼吸のタイミングが調整されています。

これまで仲村氏ら研究チームは、呼吸と脳や身体活動の関係性を研究してきました。
そして前回の研究では、「息を吸う瞬間」に記憶想起(記憶を思い出すプロセス)のパフォーマンスが低下することを発見しました。
では、どうして息を吸う瞬間に思い出す力が弱まるのでしょうか?
仲村氏ら研究チームはこの点を解明するため、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて記憶に関する脳活動と呼吸の関係性を調査することにしました。
実験には25名の健康な男女が参加。

参加者たちは、最初に「形状・色、数、位置」が異なる4パターンの図形を記憶します。
次に、10回連続でさまざまなパターンの図形が提示され、その画像が最初に記憶した4つの画像と同じかどうか判断してもらいました。