半世紀前に生命は“発見”されていた?
ディグレゴリオ氏の主張の根底には、NASAに対する根強い不信感がある。彼は1976年の火星探査機「バイキング計画」で、すでに火星の生命は発見されていたと考えているのだ。
当時、探査機の実験責任者だったギルバート・レビン氏は、火星の土壌から微生物の代謝活動を示すガスを検出したと主張した。しかし、NASAは別の実験結果からこれを否定。レビン氏は生涯にわたって「自分は火星の生命を最初に発見した男だ」と訴え続けた。
さらに、この懸念はNASA内部からも上がっている。元NASA惑星保護担当官のキャサリン・コンリー氏は、「火星サンプルを地球に持ち帰る計画は安全ではない」と指摘したために解雇された、と主張しているのだ。彼女によれば、探査機の滅菌が不十分で、サンプルに地球の微生物が混入する可能性があったにもかかわらず、NASA上層部はその指摘を聞き入れなかったという。

惑星間汚染という「ギャンブル」
地球から火星へ、そして火星から地球へ。惑星間の微生物の移動(惑星間汚染)のリスクは、常につきまとう。ディグレゴリオ氏は、過去のアポロ計画でさえ、その危険性があったと指摘する。
アポロの宇宙飛行士たちは、月面の塵を宇宙服に付着させたまま船内に戻り、帰還後は隔離された。しかし、カプセルが海上に着水し、ハッチを開けた瞬間、もし月の塵に微生物が付着していたとすれば、その時点で地球の海は汚染されていた可能性がある。「我々は、未知の存在とギャンブルをしているようなものだ」と彼は言う。
この一連の警告に対し、NASAは「将来のミッションでサンプルを持ち帰る予定はあるが、NASAは安全性を決して妥協しない」とコメントしている。
人類の夢である宇宙探査と、未知のパンデミックのリスク。我々はその狭間で、極めて慎重な判断を迫られているのかもしれない。
参考:THE Mirror、ほか
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