堅調に業績を伸ばしているビックカメラだが2019年8月期は純利益が前年比18.0%減となった。消費増税の駆け込み需要が想定を下回りPayPay(ペイペイ)キャンペーンで低採算商品の販売が増えたことも影響。ただ売上は過去最高を更新し、非家電部門も好調で好要素も少なくない。

ビックカメラ、2019年8月期の純利益は18.0%減の140億4,700万円

ビックカメラの2019年8月期の通期決算(2018年9月~2019年8月)では、売上高は前期比5.9%増の8,940億2,100万円と過去最高を更新した。しかし営業利益は同15.2%減の229億4,300万円、経常利益は同11.5%減の258億7,100万円となり純利益にいたっては同18.0%減の140億4,700万円まで落ちこんだ。

同社は通期決算の発表日の3日前、業績予想の下方修正を発表していた。売上高と営業利益、経常利益、純利益のすべての数値を引き下げるもので、その理由については梅雨が長引いたことや消費税の増税による駆け込み需要が想定以下に留まったことを挙げている。売上高の下方修正は10億円に留まったものの、営業利益は従来予想から59億円、経常利益は48億円、純利益は38億円引き下げた。

近年は業績を堅調に伸ばしていたビックカメラにとっては、決して大手を振れる決算とはならなかったといえるだろう。また売上が伸びているにも関わらず営業減益となった点については、スマートフォン決済PayPayのキャンペーンにより、利益率の低いパソコンの販売数が増えたことや固定資産の減損損失を約30億計上したことなどが影響したことも知っておきたい。

パソコンが大ヒット、カメラやオーディオ機器は不振

しかし消費税の増税やPayPayの影響はあくまで一時的なものだろう。営業利益や純利益が今期下落したからといってビックカメラの将来性に黄信号が灯ったと判断するのは早計だ。もう少し細かく同社の業績をみてみよう。ビックカメラは商品を「音響営業商品」「家庭電化商品」「情報通信機器商品」「その他の商品」に大きく分類し、各分類をさらに細かい品目に分けている。

4つの商品分類の中で最も売上構成比が高いのは情報通信機器商品で31.9%。続く家庭電化商品が31.1%、その他の商品が19.7%、音響映像商品が15.7%となっている。売上の伸びでも情報通信機器商品が好調で、前期比8.1%増を記録。特にパソコン本体の売上が同17.7%増の750億3,000万円となり、PayPayの影響はあったものの同部門におけるビックカメラへの支持が売上増に結びついたとも考えられる。

一方で伸びの足かせとなったのが音響映像商品でカメラの売上高は前年同期比9.8%減、オーディオの売上高は同8.3%減だった。

ビックカメラの非家電分野が好調、人材基盤も強化へ

ビックカメラの売上高は2018年に過去最高を記録し今期もその記録を更新した。経常利益、純利益も2015年8月期から伸ばし続けており2019年8月期は一時的な要因などが重なり減益となったが、2020年8月期には持ち直すことが十分に期待される。ビックカメラは医薬品や日用雑貨、スポーツ用品などの非家電分野も好調で今後全体の業績への影響力が増してくることも考えられるだろう。

同社は2020年8月期の通期決算予測において売上高については「5.3%増」という数字を掲げており、非家電分野での積み増しがどれほどあるかにも注目が集まりそうだ。ネット通販システムの刷新にも取り組み、2大戦略として「生産性の向上」と「持続的な成長」も掲げているビックカメラ。2019年は「健康経営優良法人2019」(ホワイト500)にも認定され、人材面の基盤強化も推進していることでも知られている。

一方で訪日外国人客の需要減少など不安材料もある。こうした戦略が次期決算でどこまで成果として現れるか要注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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