堅調な売上増が続く小売り大手イオンだが、2020年2月期の上期の純利益はまさかの6割減だった。ただその数字通りにイオンの有望性を計ることはできない。子会社の不正会計が数字に大きく影響したからだ。決算資料からイオン本来の競争力に迫る。

不正会計処理の影響を除けば純利益10.9%増

2020年2月期の上期決算(2019年3~8月)においてイオンの純利益は前年同期比64.1%減の37億9,100万円まで下落した。ただこの下落には、グループ傘下で家事代行サービスを提供するカジタク社の不正会計処理が影響している。このカジタク社の影響を考慮しない場合、純利益は前年同期比10.9%増の117億1,200万円を計上することになり一転して好調を示す数字となる。

同様にカジタク社の影響を考慮しない場合、営業収益は前年同期比0.9%増の4兆3,048億2,800万円、営業利益は同12.3%増の1,008億7,100万円、経常利益は同3.8%増の943億1,600万円となり、いずれも過去最高を記録する形となった。子会社による不正会計処理は当然褒められたことではないが、その影響を考慮しない数字を分析するほうがいまのイオンの実力を計りやすい。

そうした視点で今決算をみればイオンの実力と成長力はともに一定水準以上を保っているといえる。以下、カジタク社の影響を考慮せずにセグメント別の業績などを分析していく。

主力部門は売上減、ヘルス部門などが好調

「売上」に相当する営業収益では、同社の主力事業ともいえる「GMS(総合スーパー)」部門と「SM(スーパーマーケット)」部門は不調だった。GMS部門は前年同期比0.3%減、SM部門は同1.5%減となりイオンはこの点について「消費マインドの冷え込みや7月の記録的な低温などの天候不順による影響を受けた」と説明している。

ただこの両部門の売上減を穴埋めする以上の伸びを示したのが「ヘルス&ウエルネス」部門と「総合金融」部門、「ディベロッパー」部門だ。ヘルス&ウエルネス部門は前年同期比10.1%増、総合金融部門は同13.0%増、ディベロッパー部門は同3.6%増を記録する好調ぶり。ヘルス&ウエルネス部門に関しては決算資料で「調剤併設」や「深夜営業」などを軸としたビジネスモデルを推進した。

調剤売上が伸びたことで既存点の売上高が好調に推移。業績が回復してきた「国際事業」部門が前年同期比1.2%増を記録できたことにも着目したい。イオンマレーシアやイオンタイランドの新店舗では地域戦略が成功して計画以上の売上を確保でき中国における大規模な販促キャンペーンなども効を奏したようだ。

一時の勢いを再び取り戻せるか

2020年2月期上期決算では主力部門の売上減をほかの部門が補ったが、やはりイオンの成長には稼ぎ頭であるGMS部門とSM部門の伸びが不可欠である。イオンは年間営業収益を2010年2月期~2019年2月期まで9年連続で伸ばしているものの2014年ごろからはそれまでの勢いがやや衰えているのが垣間見える状態だ。

微増傾向に甘んじており、順風満帆であるとはいえない。EC(電子商取引)によるネット通販が若者世代だけではなく広く普及傾向だ。そのなかでイオンも柔軟に対応することも求められる。また黒字経営が続いてきたものの純利益は中期的にみると右肩下がりのため、コスト削減や利益率が高い事業にフォーカスすることなども今後求められる可能性もあるだろう。

イオンは2017年に発表した中期経営計画で「デジタルシフト」「アジアシフト」「リージョナルシフト」「投資のシフト」を掲げ、その遂行に既に動き出している。グループ内での経営統合も進め、競争力強化にも余念がない。こうした複合的な戦略でイオンが一時の勢いを再び取り戻せるかに引き続き注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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