区分マンションへの投資というステップを踏んでから、一棟マンションへ進む人は多いだろう。マンション一棟投資は区分よりも大きなリターンを狙いやすくなるのが特徴だ。しかしその分、リスクも増大する。失敗してしまう主な原因にフォーカスして紹介しよう。
区分と一棟、マンション投資の違いとは?
同じ不動産投資でも「区分と一棟はまったくの別モノ」である。一番の違いは投資額の大きさだ。区分マンションであれば百万単位、千万単位だった投資額が、億円単位に一気に跳ね上がる。
たとえば、不動産大手・野村不動産アーバンネットの掲載情報のうち、一棟マンションの価格帯別・取り扱い数は次の通りだ。
- ~1億円:67物件
- 1億円~2億円:199物件
- 2億円~3億円:129物件
3億円~:173物件
(出典:不動産投資サイト「ノムコム・プロ」2019年10月10月現在の掲載情報) 上記データを参考にすれば、一般的な一棟マンション投資なら1億円から、物件の選択幅を広げたいなら数億円~の投資額が必要になる。
ただし多くの場合、大半をローンで費用をまかなうため、実際に払う額は一部だ。一般的には2割程度の頭金、あるいは、物件の担保評価が高くフルローンが組めれば諸費用だけで済む。
いずれにしても、投資規模が大きいのは変わらない。これにより、下に挙げるような区分マンションとは違う問題が出てくる。
一棟マンションで失敗する原因1:そもそも融資が通らない
区分マンションの融資の審査は、申込者が大手企業に勤務していたり、ある程度の貯蓄を持っていたりすれば通りやすい。一方で一棟マンションは億単位になるため、一気に審査のハードルが上がる。金融機関の方でも貸し倒れリスクがあるため、収益物件の担保力や稼ぐ力を精査される。合わせて、申込者の経営者としての資質をチェックされることもある。
この部分を理解していないため、何度審査を受けても融資が通らないケースもある。そもそも一棟マンション投資ができないという事態には注意したい。
一棟マンションで失敗する原因2:空室リスクを区分マンションと同等に考えている
区分マンションと一棟マンションでは、空室から受ける経済的ダメージが違う。会社員が副業で不動産投資をする場合、区分で空室が発生しても(短期~中期的なら)給与の一部や貯蓄でカバーできるレベルだろう。
一棟マンションは部屋数を多く所有することになる。そのため空室が続出すれば給与を大きく超えてくる金額になる。空室リスクを回避するための家賃保証をするサブリースという選択肢もある。しかし、空室リスクがなくなった代わりに「サブリースの契約変更リスク」や「サブリース会社の破綻リスク」が出てくる。
サブリースに頼るのではなく、最悪をシミュレーションした空室率でも耐えられるだけの利回りや貯蓄を確保した上で一棟マンション投資には望みたい。
一棟マンションで失敗する原因3:修繕・管理の経費を把握していない
区分マンションでは、住宅設備や床などの交換くらいの修繕で済むが、一棟マンションでは各戸の修繕に加えて共用部・外壁・給排水管の修繕もオーナー負担になってくる。さらに、エレベーターや貯水槽の定期メンテナンスも必須だ。これらの施工内容・タイミング・費用感を把握していないと、一棟マンションの経営はできない。
実務は管理会社に代行してもらえるかもしれないが、費用を払うのはオーナーだからだ。
どのタイミングでいくらの修繕費が必要か。突発的な修繕が発生したらいくらかかるか。こういったことを想定して必要な額を予めストックしておく必要がある。このストックがない場合、一棟マンション投資は難しいと考えるべきだろう。
一棟マンションで失敗する原因4:利回りの低い物件を買ってしまう
一棟マンションには、ここまで解説してきたような大きなダメージになる空室リスクや負担の大きい修繕費がある。安定経営をしていくには、キャッシュフロー(利益)を残しておくことも重要だ。
区分マンションのように、返済中は プラスマイナスゼロで完済後に家賃収入が入ってくればいいというような発想だけだと危険だ。キャッシュフローを残すために、実質利回りを確認することが大切だ。
一棟マンションで失敗する原因5:売却価格を安くしてしまう
一棟マンションのデメリットは、額が大きいだけに買い手がなかなか見つからず売却しにくいことだ。だからといって「ずっと売れないのでは?」という警戒感から必要以上に安く売却することだけは避けたい。
安く売却してしまうと、運用で上手くいっていたとしても、売却益と合わせて考えたときに「トータルで失敗」ということもあり得る。最後の最後で損をしないように、適正価格を設定すべきだろう。
一棟投資は自分で空室リスクを突破できる人向け
区分マンションでは空室になっても即破綻というケースは少ないが、一棟マンションでは「空室続出=破綻」があり得る。空室が発生しても、自身で埋められるくらいの行動力がなければ手を出すべきではないだろう。大きな金額が動く投資だけに、リターンとリスクのバランスを慎重に見極めてもらいたい。
文・本間貴志(不動産・税務ライター)
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