祈祷師とカラノロの奇妙な共生

 カラノロの存在が最も色濃く現れるのが、マダガスカルの伝統医療の世界だ。「ンピタイザ(Mpitaiza)」と呼ばれる祈祷師(ヒーラー)は、カラノロと契約し、その力を借りて病気の診断や治療を行う。

 儀式の際、ンピタイザはカーテンの後ろに座り、カラノロの霊を自らに憑依させる。すると、カーテンの向こうから甲高い子供のような声が聞こえ、病の原因や必要な薬草についてお告げを授けるという。犬はカラノロの姿を見ることができるため、儀式の場に同席させることは固く禁じられている。

 この信仰は過去のものではない。現代のマダガスカルにおいても、「あの人が急に成功したのは、家にカラノロを匿っているからだ」などと噂されることがあるほど、カラノロは人々の日常に溶け込んでいる。

マダガスカルの森に棲む謎の存在「カラノロ」とは? UMAか、精霊か、それとも…の画像3
(画像=画像は「Strange reality blog」より)

その正体は、隠れ住む部族か、それとも…

 では、この不可思議な存在の正体は一体何なのだろうか。いくつかの説が考えられている。 一つは、伝説の民ヴァジンバの子孫が、今も森や洞窟で人知れず暮らしているという「未知の部族説」。あるいは、インドネシアで発見された小型人類「ホモ・フローレシエンシス」のような、未知のヒト科動物ではないかという説もある。

 そしてもう一つ、有力なのが「キツネザルの誤認説」だ。マダガスカルには、夜行性で奇妙な姿をしたキツネザルが多く生息する。特に、大きな目と長い指を持つ「アイアイ」の姿は、夜の闇の中で見れば、人々が恐れる精霊の姿と重なっても不思議ではない。

 しかし、どの説も決定打には欠ける。おそらくカラノロとは、単一の答えに収まる存在ではないのだろう。それは、マダガスカルの雄大な自然と、そこに暮らす人々の豊かな精神世界が融合して生まれた、複雑で奥深い文化的シンボルなのだ。

 森の闇に潜む小さな影は、今日も島の人々を見つめているのかもしれない。

参考:Strange reality blog、ほか

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