
(画像=画像は「YouTube」より)
食料も真水もないまま1年以上も海の上で生き延びる。それはまるで悪夢のような話だが、一人の男が奇跡的にそれを成し遂げた。彼の名はホセ・サルバドール・アルバレンガ。たった2日間の予定だった漁が、1万km以上もの海を15ヶ月(438日間)にわたって漂流する、壮絶なサバイバルへと変わってしまったのだ。
嵐が招いた絶望―たった一週間で全てを失う
2012年、当時33歳だったベテラン漁師のアルバレンガは、メキシコから漁に出た。急遽、経験の浅い22歳の青年、エセキエル・コルドバを伴っての出航だった。最初は順調だったが、やがて嵐が彼らを襲う。楽観視していた二人は、そのまま漁を続行するという命運を分ける決断を下してしまった。
巨大な波はボートのエンジンを破壊し、彼らは為す術もなく沖へと流された。嵐は一週間も続き、無線やGPS、そして食料や水といった装備のほとんどを失った。陸地への最後の通信で、彼は「助けてくれ、マジでヤバい状況なんだ」と叫んだが、これが最後の交信となった。嵐が過ぎ去った時、彼らは完全に大海原の孤独な迷子となっていた。
鳥の血を飲み、亀を食らう…壮絶なサバイバル生活
生き延びるため、二人は創造力を駆使しなければならなかった。素手で海鳥や亀を捕らえ、その肉を食べ、血を飲んで渇きを癒した。過酷な日々の中、彼らは互いの母親について語り合い、親不孝だった過去を悔やみ、神に赦しを乞うた。「もし生きて帰れたら、母さんたちがもう働かなくていいように、もっと一生懸命働くよ」。そう誓い合ったが、その約束が果たされることはなかった。
漂流から10週間後、同行していた青年コルドバが、食べた鳥が原因で体調を崩し、帰らぬ人となった。たった一人の仲間を失ったアルバレンガは、深い自責の念に苛まれ、コルドバの幻覚と会話を始めるなど、精神的にも追い詰められていった。

(画像=Image byaddesiafromPixabay)