国民民主党の17議席獲得も示唆に富む。「手取りを増やそう」——このシンプルなメッセージが、政治に無関心だった層を動かした。18~29歳の支持率13.4%(前月比10.0ポイント増)という参政党の数字と合わせて考えると、若年層が求めているのは複雑な政策論争ではなく、生活に直結する明快な提案であることが分かる。

一方で、日本維新の会の停滞は教訓的だ。選挙区3、比例4の計7議席は改選議席を上回ったものの、勢いは明らかに失速している。自民党との接近が「野党らしさ」を損ない、前原代表代行の消極的な選挙戦術がリーダーシップの欠如を印象づけた。

共産党の比例獲得議席が過去最低の3議席に留まったことも、時代の変化を物語る。イデオロギーに基づく伝統的な支持基盤は、もはや選挙を左右する力を持たない。

最も象徴的だったのは、元広島県安芸高田市長・石丸伸二氏の「再生の道」の全候補者落選である。都知事選での健闘が記憶に新しいだけに、個人の知名度と組織力の差を痛感させる結果となった。

変革の先に待つものは何か

この選挙が示すのは、日本政治における世代交代の進行である。しかし、それは単純な「若返り」ではない。インターネットを駆使し、明快なメッセージを発信し、草の根の組織を構築する——新しい政治手法を体現できる勢力が台頭している。

比例投票先の順位——公明党5.0%、れいわ新選組3.7%、日本維新の会3.4%、共産党2.5%、日本保守党2.5%——は、政治地図の確実な変化を示している。

だが、この変化の行き着く先は不透明だ。新興政党の多くは、具体的な政策よりもイメージや雰囲気で支持を集めている面がある。「ふわっとした」支持基盤は、実際の政策実現において不安定要因となる可能性を孕む。

石破政権の「粘り腰」も、この過渡期の特徴的な現象といえる。古い政治システムは確実に衰退しているが、新しいシステムの輪郭はまだ定まらない。この不安定な状況は、内閣不信任案という最終手段が現実味を帯びるまで続くかもしれない。