さらに実験中は、機能的近赤外分光分析法(fNIRS)によって脳活動を測定しています。
実験の結果、「手で操作可能な物」に対する脳活動と口頭反応の速さが、手の拘束による有意な影響を受けると分かりました。

手が拘束されると、左脳の頭頂間溝と下頭頂小葉の活動が弱まり、言葉の意味処理が阻害されたのです。
このことから、何かを説明するときについつい体や手が動いてしまうのはしょうがないことだと分かります。
むしろ、身振りや手振りがあるときこそ、その人の脳は盛んに活動していると言えるでしょう。

さらに、手や身体を動かして学ぶことは、言葉や物を記憶し、概念を理解するのに役立つとも言えます。
人間の脳は、身体の動きを含めて言葉の意味を記憶している可能性が高いのです。
このことは、AIの記号接地問題にも役立つことでしょう。
コンピュータに人間のような知能を与えるには、同じく人間のような身体や感覚を与えて学習させることが大切なのかもしれませんね。
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参考文献
人工知能の分野でも注目 身体化認知のはたらきと脳内メカニズムを実証 ~手を拘束すると言葉の記憶成績が低下~
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-01795.html
元論文
Hand constraint reduces brain activity and affects the speed of verbal responses on semantic tasks
https://www.nature.com/articles/s41598-022-17702-1