●この記事のポイント ・米アマゾン・ドット・コムが全世界の物流業務で75万台以上のロボットを運用していると公表 ・AIを搭載したヒト型ロボットの導入について実験中 ・アマゾンは公式には従業員の労働災害の削減と処理コストの削減が目的だと説明しており、人員削減によるコスト削減だとは明言していない
米アマゾン・ドット・コムが全世界の物流業務で75万台以上のロボットを運用していると公表した。同社は今月、AIの導入によって今後数年間で従業員の数を削減するとの見通しを示したが、積極的なロボット活用の目的は大幅な人員削減によるコスト削減なのか。また、同社は物流拠点などでAIを搭載したヒト型ロボットの導入について実験中であることも明かしたが、米半導体大手・NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・フアンCEOは「次のAIの波はフィジカルAI(物理AI)」だと強調するなど、同領域ににわかに注目が集まっている。同社は開発基盤モデル「Cosmos」やロボット向け開発環境「Isaac」を、米Google(グーグル)はロボット工学向けAIモデル「Gemini Robotics」を運用するなど、有力テック企業が注力し始めているが、ヒト型ロボットは従来のロボットとは何か違うのか。そして、その普及は社会にどのような影響をおよぼすのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
●目次
多くの場面でヒト型ロボットが増えていく
ニューズフロントLLPのパートナーの小久保重信氏によれば、アマゾンの物流業務で使われているロボットは多岐にわたる。
「アマゾンは2012年に米スタートアップのキバ・システムズを買収して、当初は倉庫内で搬送用ロボットを運用していましたが、現在では進化して完全自律走行型搬送ロボット『プロテウス』が稼働しています。AIによる画像認識によって従業員との衝突を回避し、人間による操作が不要で自動で搬送を行うことができます。ロボットアーム型の『カーディナル』や『ロビン』は、荷物を持ち上げて宛名のところに仕分けする機能を持っており、これも進化して現在では梱包箱ではなく商品パッケージそのものをピックアップして仕分けする『スパロー』も使われています。ラックの高い場所から商品をピッキングして別の場所に格納するロボットもあります。
そして23年にはアジリティ・ロボティクスというスタートアップが開発した二足歩行型ロボット『ディジット』を導入しましたが、これはまだ実験段階で、現時点では空のコンテナを回収して任意の場所に搬送するということを検証している段階です」
従来型のロボットとヒト型ロボットは何が違うのか。
「ロボットアームなど従来のロボットは、人ができないことをやるというのが大きな意義でしたが、人ができることを代替するのがヒト型ロボットです。従来の大規模なロボットとは異なり、ヒト型ロボットはサイズが小さく手先で細々した作業を行うことができ、移動もできて、ヒトがやることをより正確に行えるというのが特徴です。大型ロボットが入れない場所に入れたり、階段を昇り降りできるように改良されていけば、どんどん人と置き換わっていくでしょうし、搭載されるAIの性能も向上していくので、物流・製造現場に限らず多くの場面でヒト型ロボットが増えていくと考えられます」