目次
しし狩バンパーとは
しし狩バンパーを付けようと思った理由や必要性
しし狩バンパーとは
ここからが本稿の本題だ。
しし狩バンパーとは、ゴツいパイプでできたフロントをガードする補助バンパーのようなもののことで、ブッシュバーやグリルガードなどが一般的な呼称だと思う。

上の写真が車体に取り付ける前のしし狩バンパーだ。
軽トラは小さいながらも、大きなトラックと同じくラダーフレームの上にボディーが載っている構造(ホンダ アクティはモノコック構造なので例外)で、そのフレームの先端にこれを取り付けてフロントをガードする。
オーストラリアにはカンガルーという高速移動する大型野生動物が生息しているが、カンガルーと衝突したら非常にダメージが大きいので、オーストラリアにはカンガルーバーと呼ばれるゴツいフロントガードがある。
しし狩バンパーもこれと似たもので、「しし」とカンガルーの違いといったところだろうか。
80年代~90年代の日本における4WDブームの頃は、日本でもランクル・パジェロ・ビッグホーン・ハイラックスサーフ・テラノなどにカンガルーバーやグリルガードなどの類を付けることが流行った。

もちろん本当の目的で付けている人もいたが、そもそも日本にカンガルーはいないし、街中で乗られているだけのクルマの方が多かったような状況だったので、大半はゴツさを演出するための高価な飾り物でしかなかった。
しかしオーストラリアでは、普通の住宅地で井戸端会議をしているおばさん達の輪に混ざるようにカンガルーが立っていたのを見たこともあるので、オーストラリアの少し田舎に住んでいる人にとってカンガルーバーは、伊達やオシャレではなく安全確保のための実用品だ。
しし狩バンパーを付けようと思った理由や必要性

ゴツい4WDブームの頃、私は雪深い山奥に行く機会が多かったので、4WDのRN36ハイラックス(初代の4WDハイラックス)やマツダプロシードに乗っていたが、大袈裟に飾り立てることを恥ずかしく感じてしまうタイプなため、カンガルーバーなどを付けることはなかった。
なぜ今、ハイゼットジャンボに「しし狩バンパー」を?
現在私は千葉県の房総半島南部に住んでいるのだが、私の住んでいるところから外界に出る際には、ほとんどの場合房総半島中心部の山を越えることになる。
山を越えると言っても千葉県は最高峰でも408mしかない日本一標高の低い県なのだが、低い割に未開のような山林が案外多いため、野生動物も多く生息している。

東京では猿が住宅地に現れたり、河原に鹿が出たりしただけで大騒ぎになってテレビのニュースにもなるが、この辺りでは猿・日本鹿・猪・キョン(外来種の小型の鹿の一種)・狸などがそこらにいるのは当たり前のことだ。
野生動物との遭遇が引き起こす事故
山の中の幹線道路を夜走行していると、木の影から鹿の目が光っているのを見かけるのはよくあることだが、鹿は一度道路上に飛び出すと戻るということがあまりないようで事故も少なくなく、早朝走っていると、夜中に交通事故に遭った大きな鹿の死体が道路脇に横たわっているのを見かけるのも珍しいことではない。
鹿だけでなく、夜は猪や狸の集団が道路を渡って行く様子を目にすることも度々ある(たまに日中に目にすることもある)が、こんなこともあった。
夜の山中の幹線道路を、ちょっと無茶なスピードでかっ飛んで行った軽自動車が、カーブを曲がった先で左に寄りもせず停車していたので、どうしたのかと思いながらと近づくとボンネットから煙を出してフロントは大きく潰れていて(おそらく廃車)、その先には車線片側を丸々塞ぐような巨大な猪が横たわっていたのだ。
また、山中の幹線道路は信号機も滅多になく空いているので、平均速度が高いのだが、ボンネットのない軽トラの前部にはクラッシャブルゾーンが少ないため、そんな光景を見ると不安になる。
現行のハイゼットジャンボの構造
そして、人と衝突した際に人へ与えるダメージを小さくするためなのか、実は現行のハイゼットジャンボの顔(前面)は全面プラスチックでできている。
もちろんプラスチックの外面からいきなりキャビンということではなく、プラスチックの外面の内側はしっかりとした鉄の骨組みでできている。

エアバッグも装備していて、現在の厳しい衝突安全基準をパスしているのだから、前面が鉄板一枚だったような頃の、ちょっと古い軽トラよりずっと安全に作られているであろうことは分かっているのだが、プラスチックの外面を触ってしまうと、一層不安感が増してしまうのも事実だ。
「しし狩バンパー」が必要な理由
また、房総半島ではベルクマンの法則(北のものほど体が大きくなる)など関係ないかの如く、房州は人間の男も鹿や猪も大きな個体が多い。
ニホンジカは1tを超えることもあるようで、猪は2t近くになるのもいるそうだ。
そこまで大型になる鹿や猪がこの辺りに存在しているかは別として、とにかく非常に大型の個体を見かけるのは事実で、軽トラがそんなのと正面からぶつかったらひとたまりもないことは容易に想像がつく。
家の周りにうじゃうじゃいるキョンはシバ犬くらいの大きさだが、仮に60km/hくらいの速度でぶつかったら、フレームにまでダメージが及ぶことはないにしても、プラスチックでできたハイゼットジャンボ君の顔にはヒビが入るのではないかと思う。
このように、東京都心部から直線距離にしたら50km程度しか離れていない房総半島の山中はかなりワイルドな環境なため、もしもの場合に少しでも受けるダメージを下げたいということで「しし狩バンパー」を付けようと思ったということだ。
現在の私にとってこれは見栄や飾りではなく、オーストラリアの田舎の人にとってのカンガルーバーのようなものなのだ。
房総半島だけでなく他地域も野生動物
まだ房総半島に住んでいなかった頃は、遊びや仕事で訪れても現在ほど野生動物を見かけることはなかったように思う。
確かな情報とは言えないが、野生動物は絶滅危惧種が増えている反面、良くも悪くも鹿・猪・猿などは増えているような実感がある。
実際千葉県では、1950年代にニホンジカは絶滅が危惧されるほど激減してしまったそうだが、狩猟の禁止などによって数は回復し、現在は増えすぎて農林業などへの被害が増えており、深刻な問題となっている。
さすがに絶滅しそうなほど激減していた頃のことは知らないが、やはり私は数が回復し始めた頃から見ていたことになり、増えているように感じているのは間違いではなさそうだ。
そして、似たようなことは房総半島以外でも起きているように思う。
例えば、30年くらい前は西伊豆辺りで鹿を見た記憶は特になかった(猿は昔からたくさんいた)が、10年くらい前からは、夜中に山中だけでなく海岸近くでも鹿の群れを見かけるようになって驚いた。
しし狩バンパーの必要性が高まる
車中泊旅を楽しむ人は、こういった野生動物が多い地域へ出向く人も多いと思う。
もちろん第一に心掛けるべきことは安全運転だが、もしかしたら80年代~90年代の4WDブームの頃とは違って、しし狩バンパーのようなフロントガードの現実味が高くなりつつあるような気もしている。
ガードとして以外の用途も
また、私にはもう一つこれをつけたかった理由がある。
屋根に長いカヤックやボードなどを載せる際、キャリアにベルトで固定するだけでなく、用心のため、ロープを取りたくなることがあるのだ。

ハイゼットトラックにも適当な場所がないだけでなく、先述の通り顔は全面プラスチックでできているため、車体の下のフレームからロープを取ったとしても、強い力が加わると顔が割れてしまう可能性がありそうなのだ。

しかし、しし狩バンパーは車体から前に出ているので、ここにロープを掛けても車体に干渉することはないし、しっかりしているので安心してロープを掛けることができる。
カヤックのような長尺物を屋根に積む際、これはかなり重要なことで、大いに役立つものなのだ。
昔の車と今の車のデザインの違い
しし狩バンパーはまだ付けたばかりなのに、何故かこれが付いている顔の方が今までよりむしろしっくりきていて、大袈裟な面構えになったように感じることも全くなく、自分の感覚的には普通の顔になったような気さえしている。
何故だろうと考えてみた。

昔の自動車は、ボディーとは明らかに別体の「バンパー」が付いているのが普通だったが、現在はバンパーも車体の一部のようなデザインになっているのがほとんどで、どこからどこまでがバンパーと呼ぶ部分なのかわからないようなデザインが主流だ。

先述の通り、ハイゼットジャンボも顔の表面は全面プラスチックでできているので、バンパーというものがないようなデザインとなっている。
正直に言うと、ハイゼットジャンボの顔に何か理由の分からない違和感をずっと感じ続けていたのだが、その違和感の原因が、バンパーがあることに慣れ親しんできた者にとってはバンパーを外してしまったようにも思えるデザインだったのだと判明し、気持ちがスッキリした。
そういった意味でもしし狩バンパーを付けて良かったと思っている。
これでより一層ハイゼットジャンボ君の顔にも親しめそうだ。