従来の説(免疫逃避説や動物起源説)では、このような奇妙な広がりを完全には説明できませんでした。
研究チームは慎重に、「BA.2.86の起源を最終的に決定するにはさらなる調査が必要だ」と述べています。
このような控えめな表現からも、研究者が今回の結果を客観的なデータに基づいて注意深く提示していることが伝わります。
近年、新型コロナウイルスの最初の型(武漢株)の起源が研究所からの流出だったのではないか、という説が注目を集めています。
この説は以前から陰謀論としてインターネット上で話題になることが多かったのですが、現在では米国政府をはじめ複数の国の公的機関がその可能性を公式に認めるまでになっています。
ただし、今回のBA.2.86系統を含む後続の新たな変異株については、まだどの公的機関からも公式な見解は示されていません。
つまり、現在のところはあくまで武漢株のみに関する話であり、それ以降に登場した変異株については議論の余地があるということです。
もし、今後の調査によって今回のBA.2.86系統も研究所由来であると確認されれば、これは非常に重大な事態となります。
なぜなら、それは現在の世界的なウイルス研究の管理体制や安全対策が非常に不十分であることを示してしまうからです。
今回の研究は、こうした「最悪のシナリオ」の可能性に警鐘を鳴らす役割も果たしているのです。
実際、研究者らは病原体の感染力や毒性を人為的に高めるような「機能獲得研究」の一時停止や、各国の研究施設間のルールの統一、違反を監視する国際的な仕組みづくりが必要だと提言しています。
これまではSF映画や小説のような話だと感じられていたかもしれませんが、科学的なデータに裏付けられた今、決して無視できる話ではなくなっています。
今回のBA.2.86系統に関する研究は、ウイルスがどのようにして世界に広がり、どのように変異していくのかという謎に対し、科学の目をより一層鋭くして向き合っていく必要があることを、私たちに強く印象付けた研究といえるでしょう。