自由党と日本民主党が合体して自民党となったのが1955年11月、二大政党制を目指すつもりで小選挙区制を導入したのが1994年です。自民党の政治資産は次第に消滅してきており、ついに歴史的な転換点にきたことを示唆しているのが25年参院選だと思います。

長期政権を記録した安倍政権がなしたことといえば、トランプ米大統領、プーチン大統領と親交を結んだこと、異次元金融緩和と財政拡張を軸とアベノミクスでしょうか。そのトランプ氏は戦後の繁栄を下支えした世界秩序、国際機関、各国との同盟関係の破壊であり、プーチン氏はウクライナ侵略です。アベノミクスがもたらした金融財政上の負けの資産もいかに巨大かが否定できなくなっています。

トランプ氏のディールという名の威嚇外交(高関税、グローバリゼーションの否定)で、世界は大転換期にきています。日本が無傷ではあり得ません。対米従属関係はいつまでも続かないし、対中関係を改善して信頼醸成を試みる外交も必要になってくるでしょう。日本はそうした歴史的な転換期を迎えているのに、参院選での議論は「財源論なしに手取りを増やす」、「意味があいまいな日本人ファースト」、「社会保障費の財源を失う消費税の減税・停止」に明け暮れました。

政治部長の解説は舌足らず

各紙の政治部長はどんな解説を書いているでしょうか。「主要野党では議席を伸ばしたものの、既成政治批判の中に埋没して感がある」(朝日)、「一日も早く政治を安定させ、国の針路を定める必要がある」(読売)とありきたりの書きっぷりです。「世界も日本の政治も歴史的な転換期を迎えている」という基本的な命題に全く触れていません。

社説はどうだったでしょうか。「閉塞感をもたらしている政治の現状に有権者は変化を求めた。政局の混乱を最小限にとどめるため、与野党には責任がある」(日経)も、日本の歴史的転換点における政治のあり方という文言はありません。