実際、本研究でも語彙の変化に注目しましたが、AI風の文章構成(長く丁寧な文体や論理展開)や感情表現の変化(過度に中立で乾いたトーンになる等)についても影響が現れ始めているのではないか、と研究者らは示唆しています。
たとえば、「ChatGPT的な丁寧で論文調の話しぶり」が会話全体を硬くし、人間らしい砕けた表現や感情の起伏が減る可能性もあります。
わずか約1年半ほどで既にChatGPTは人間の話し方を変えてしまったわけですが、今後さらにAIが進歩し普及したら、私たちの言葉や文化はどれほど変容するのでしょうか?
もはやAIが私たちの文化を作り替えるか否かではなく、どれほど深く作り替えるかが問われています。
研究チームの矢倉氏は「言葉の頻度が変われば、物事の論じ方や考え方も変わりうる」と述べ、私たちの文化そのものが影響を受ける可能性に言及しています。
言葉は単なるコミュニケーション手段ではなく、私たちの思考や社会の在り方と切り離せないものです。
その言葉に生じた微妙な変化が積み重なれば、やがて大きな文化の変遷につながるかもしれません。
AI時代における人間と言葉の関係性をどうデザインしていくかは難しい課題ですが、研究者たちは、多様性を保ちながらAIの恩恵を享受する道を模索すべきだと強調します。
人類と言語の豊かな多様性が失われないよう、AI開発と並行して言語的・文化的多様性を守る取り組みが重要になるでしょう。
便利なAIを使いこなしつつも、自分自身の言葉を振り返り、「いつの間にかAIの口調に染まっていないか?」と、時には立ち止まってみることも、私たちにできる小さな第一歩かもしれません。
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元論文
Empirical evidence of Large Language Model’s influence on human spoken communication
https://doi.org/10.48550/arXiv.2409.01754