初対面の人との会話は、多かれ少なかれ、誰しも緊張すると思います。
こうした不安をあおる社会状況に置かれると、なんとなく視線がキョロキョロしてしまいそうです。
しかし英ボーンマス大学(Bournemouth University)による2021年の研究では、社会不安を抱きやすい人はむしろ、視線の動きがほぼなくなることが実験で示されました。
一体なぜでしょうか?
研究の詳細は2021年10月25日付けで学術誌『PLOS One』に掲載されています。
目次
- 社会不安を抱きやすい人ほど、実はキョロキョロしない?
- なぜ視線を動かさないのか
社会不安を抱きやすい人ほど、実はキョロキョロしない?
本研究では、イギリスの大学に通う学生30名を対象に、見知らぬ人が部屋に入ってきたときの視線の動きをトラッキングしました。
並行して、学生たちには、「社会不安障がい(SAD)」のスコアを評価するアンケートに回答してもらっています。
社会不安障がいとは、社会的状況(たとえば、初対面での会話や人前でのスピーチなど)において、周りからどのように思われるかを必要以上に気にして、過度の不安や緊張に襲われることです。
具体的な症状としては、不安や緊張による腹痛、発汗、赤面、ふるえ等があげられます。
過去のアイトラッキング研究では、社会不安のある人は他者をあまり見ない傾向がある「回避性(avoidance)」と、反対に、周りにいる他者をより注意する「過覚醒(hypervigilance)」の両方が指摘されています。
しかし、どの実験も調査方法がかなり人為的であるため、自然な観察ができていませんでした。
そこでチームは、本物の社会的シナリオに近い状況を設定し、実験を行いました。
Credit: jp.depositphotosまず、学生は一人ずつセミナールームに呼ばれ、椅子に座って、視線追跡用メガネを装着し、先のアンケートに回答してもらいます。