黒田総裁は「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する。2%の物価安定目標は変更しなくてもよい。達成時期は若干後ずれするが金融政策は変えない」と強気でした。木内委員が「物価の基調は金融政策が決めるものではない」と、痛烈に批判すると、確信犯的な緩和論者だった岩田規久男副総裁は「避けるべきリスクはデフレへ戻るリスクだ。金融政策で(物価を)動かせないとすると、『一体、ここに何をしにいらっしゃたのか』」とまで述べました。副総裁にあるまじき感情的過ぎる発言です。
「通貨供給量2倍、消費者物価2%を2年で達成する」と、黒田氏は大見得を切りました。結局、10年経っても、大規模緩和策によるデフレ脱却の効果はなく、物価が上がり始めたのは、新型コロナウイルスによる経済・社会的混乱、ロシアによるウクライナ侵略などの外的要因のためです。
消費者物価は、金融政策の枠外の要因でどんどん上がり始め、すでに3年以上も3%を超えています。金利をなかなか動かせないので円安も進み、物価を上げました。参院選でも、物価高に悩む有権者は自公政権から距離を置き、過半数割れも起こりそうです。
異次元緩和に当初から批判的だった日銀ウオチャーの加藤出口氏(東短リサーチ)は2014年7月発行の著書「日銀、『出口なし』/異次元緩和の次に来る危機」(朝日新書)で、「このような超緩和策からの出口を経験した中央銀行はどこにもない。終わるに終われなくなる。出るに出られなくなる」と、警告しました。今回、公開された議事録より、一年も前に危機を察知していました。
黒田総裁は東大法学部卒(元財務官)、中曽副総裁は東大経済学部卒、若田部副総裁も東大経済学部卒です。学歴は皆さん、第一級でしょう。そんな大秀才たちがやったことが異次元金融緩和であり、初期からその効果に疑念、疑問を持つ声があがっていたのに、一顧だにしませんでした。
異次元緩和は財政ファイナンス(国債の大量購入、財政拡大)にいいように使われ、そのことを反省しなければならないのに、参院選の票稼ぎに与野党が次々に打ち出している公約は、財源の当てがない消費税減税・停止、国民に対する現金給付などポピュリズム政策が踊っています。異次元緩和がもたらした金融財政危機など、政治家たちはどこ吹く風といった体たらくです。