この試合で左ウイングバックを務めた石橋は、試合後に筆者の取材に対応。高い位置をとるよう指示を受けていた前半に、窮屈さを感じていたようだ。
ー味方センターバックがボールを保持したときに、石橋選手はどんな立ち位置を心がけましたか。
「今日の前半は指示的な部分があって(指示があって)、自分が高い位置をとることで生まれるスペースにシャドーの選手(小田と小野瀬)が入るという戦術だったんですけど、清水さんもすぐに対応してきて、後半はなるべく自分が(少し低めの位置で)ボールを受けて、シャドーの選手に縦に走ってもらう戦術にするよう指示がありました」
ー味方センターバックと石橋選手の距離が開きすぎて、パスが繋がりにくくなる場面もありましたね。
「そうですね」
ー石橋選手が高い位置から降りながらパスを受けなければならず、相手ゴールに背を向けた状態でのプレーも多かった気がします。
「いつもと比べ、前半は高い位置でなかなかボールを受けられなかったですね。後半は自分が落ちて(少し低めの位置へ降りて)前向きの体勢を作れたので、今後は降りてボールを受けてからのプレーが自分の課題になると思います」

攻撃配置の整備は急務
ウイングバックの立ち位置を含む攻撃配置の悪さこそ、湘南の積年の課題である。清水戦では左ウイングバック石橋の高すぎる立ち位置の修正が遅かっただけでなく、MF鈴木雄斗(右ウイングバック)が自陣後方タッチライン際でボールを受けることで、パス回しが手詰まりになる場面も散見された。

ウイングバックがタッチライン際かつ低すぎる位置(味方センターバックとほぼ同列の位置)でボールを受けた場合、自身の傍にはタッチラインがあるため、図2のようにパスコースが必然的に180度方向に限られる。これに加えウイングバック自身が相手選手の寄せを浴びれば、その後のパスやドリブルの成功率は極めて低くなる。この問題は2023シーズンから起きており、同年のJ1リーグ第7節から21節の15試合で5分け10敗と、湘南は1勝も挙げられず。また、2024シーズン開幕節から第11節までの計11試合でわずか1勝と、同クラブは2年続けて極度の成績不振に陥っている。今シーズンも同じ問題が起きている現状を、就任5年目の山口智監督はもちろんのこと、同監督を支えるコーチングスタッフも厳粛に受け止めるべきだ。