その結果、涙の効果は一様ではなく、「顔が冷たそうに見える人」の涙の方が、むしろ誠実に感じられやすいことが明らかになったのです。

一方で、温かみのある顔の人が涙を見せた場合には、かえって“演技っぽく”感じられる傾向がありました。

さらに、涙を流している場面が「操作的」だと感じられた場合、全体として涙の信ぴょう性は下がり、「この人は泣いて他人を動かそうとしているのでは?」という印象を与えやすくなることも確認されました。

なぜ「泣きそうにない人」の涙は信じられるのか?

チームは「誰が泣いているか」によって涙の解釈が大きく変わると指摘しています。

その中でも興味深かったのが、男性の涙が、女性の涙よりも“誠実”と評価されやすかったという点です。

社会的に「男性は泣かないもの」という文化的な思い込みがある中で、実際に男性が涙を見せると、それが「意外性」となり、「よほどの理由があるのだろう」と感じられるようです。

一方、女性の多くや“温かみのある人”はもともと感情的な表現をしやすいと見なされているため、涙を見せても「またか」と思われたり、「わざとでは?」と疑われる可能性があるのです。

さらに観察者側の性格も影響します。

研究では、いわゆる「ダーク・トライアド」(ナルシシズム、マキャベリズム、サイコパシー)の傾向が強い人は、涙をより“操作的”と受け取り、信じにくい傾向があることが示されました。

つまり、涙が「本物」として信じてもらえるかどうかは、泣いている人の印象、状況、そしてそれを見る側の性格や先入観という複雑な要因が絡み合っているのです。

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Credit: canva

この研究は、私たちが涙を単純に「感情のあらわれ」として受け取っていないことを改めて示しました。

「泣かないはずの人が泣く」というギャップこそが、涙をもっとも強く、そして誠実に響かせる鍵なのかもしれません。

涙は必ずしも感情の純粋な噴出ではなく、見る人の解釈によってその意味が大きく変わる“社会的なシグナル”でもあるのです。