みなさんは誰かが泣いているのを見たとき、それを「本当に悲しいんだ」と受け取りますか?

それとも「演技では?」と疑ってしまいますか?

涙は感情のあふれたサインのように思われがちですが、実は私たちは状況や相手によって、その涙を“誠実”にも“操作的”にも受け取っています。

そして最近、ポーランド・ウッチ大学(University of Lodz)の研究で、「普段あまり泣きそうにない人」の涙こそが、もっとも誠実に見える傾向があることが心理実験で実証されました。

研究の詳細は2025年7月16日付の科学誌『PLOS ONE』に掲載されています。

目次

  • 涙が「誠実」に見える条件とは?
  • なぜ「泣きそうにない人」の涙は信じられるのか?

涙が「誠実」に見える条件とは?

感情の涙は本来、言葉を超えた“誠実な感情表現”と考えられてきました。

なぜなら、意図的に涙を流すのは(多くの人にとっては)難しく、他人の助けを求める自然なサインとして働くからです。

しかし現実には、涙は「演技」や「同情を引く手段」とも見なされることがあります。

特に男女間の言い争いや法廷で罪逃れをしようとする場面など、何かを得ようとしているような状況では、涙はしばしば“嘘くさく”感じられてしまいます。

今回の研究では、カナダ、ノルウェー、ポーランド、南アフリカの参加者1893人に対し、涙を流している顔写真を提示し、その誠実さや支援意欲などを評価してもらいました。

写真の人物には、顔立ちに「温かみのある顔」や「冷たそうな顔」などの違いがあり、また、置かれた場面も「操作的(例:列に割り込もうとしている)」か「非操作的(例:順番をちゃんと待っている)」かが操作されていました。

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実験画像(左:オリジナルの顔写真、中央:冷たそうな顔、右:穏やかそうな顔、上列:涙なし、下列:涙あり)/ Credit: Monika Wróbel et al., PLOS ONE(2025)