カジュアル衣料品店大手の「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの2019年8月期の連結決算は、「過去最高」尽くめとなる好調なものだった。その中でも特に注目すべき点が、ユニクロの営業利益において海外部門が国内部門を上回ったことだ。決算内容を読み解いていこう。

営業利益で海外部門が国内部門を逆転

ファーストリテイリングが10月10日に発表した2019年8月期の連結業績(2018年9月~2019年8月)では、売上収益が前期比7.5%増の2兆2,905億4,800万円、営業利益が同9.1%増の2,576億3,600万円、純利益が同5.0%増の1,625億7,800万円に上った。いずれも過去最高を記録し、2018年8月期から比べると増加幅は縮小したものの、堅調な数字を残した形だ。

また、冒頭でも触れたが、ファーストリテイリングの主力事業であるユニクロの営業利益において、今回の通期決算で海外部門が初めて国内部門を逆転した。ユニクロの国内事業の営業利益は前期比13.9%減の1,024億円だったのに対し、海外事業の営業利益は16.8%増の1,389億円に上った。

簡単に言えば、国内部門が不調で海外部門が好調だったことから、今回の逆転に至った形だ。では、海外部門においては、どのような国におけるどのような事業が好調なのだろうか。

「グレーターチャイナ」の増収増益が牽引

決算発表における説明によれば、海外部門の全体の売上収益は過去初めて1兆円を超え、1兆260億円を記録している。海外部門における売上収益と営業利益の増加を牽引したのが「グレーターチャイナ」(中国本土・香港・台湾)における事業で、売上収益が前期比14.3%増の5,025億円、営業収益は同20.8%増の890億円に上っていることが説明されている。

ファーストリテイリングはグレーターチャイナにおける事業について「ユニクロのLifeWearのコンセプトが支持され、No.1アパレルブランドとしてのポジションを確立できた」と分析している。(ファーストリテイリング2019年8月期決算短信資料より)

今後の伸びが期待されるEC(電子商取引)部門も同30%増を記録しており、今後の営業利益のさらなる増加に寄与しそうだ。

グレーターチャイナにおける事業だけではなく、東南アジア・オセアニア地区における事業でも好調な数字を残した。発表によれば、売上収益と営業利益はともに前期比約20%増となっている。欧州やロシアでの事業も好調だった。

ちなみにファーストリテイリングの売上収益全体におけるユニクロ事業の構成比は82.9%で、さらにその数字のエリア別の構成比をみてみると、日本が38.1%、グレーターチャイナが21.9%、その他アジア・オセアニアが13.4%、北米・欧州が9.5%となっている。

柳井会長「世界中で受け入れられている」

ファーストリテイリングの過去の業績をみてみると、売上収益と営業利益ともに右肩上がりの状況が続いている。店舗数も2020年8月末にはユニクロの国内店が817店舗、ユニクロの海外店が1,520店舗まで増える見込みだ。

また、今後はジーユー事業への注目度が高まっていくことも予想される。ジーユー事業の売上収益の構成比は同社全体の10%程度と小さいものの、営業利益は今期139.2%増を記録しており、2020年8月末には店舗数を445店舗まで増やす見込みだ。

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は決算発表会で、ユニクロのインドやベトナムへの出店計画にも触れ、攻めの姿勢を崩さない方針を改めて協調した。ユニクロの営業利益において海外部門が国内部門を上回ったことに関しては、「僭越ですが、世界中で受け入れられているなっていう風に思いました」と手応えを語った。

日本市場が縮小傾向にあるなか、海外市場においてはまだまだ夢がある。次期決算ではどこまで海外部門の営業利益が伸びるのかに関心が集まりそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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