もうひとつ、トラフザメには面白い特徴があります。

トラフザメという名前ですが、見た目の柄としてはトラ柄ではなくヒョウ柄に近いです。そして、英名では「Zebra Sherk(ゼブラシャーク)」と呼ばれています。なぜこんなにも見た目と名前に差があるのでしょうか。

成長の過程に秘密あり

トラフザメは、生まれた時の姿はこげ茶と白の縞模様の柄なのです。この柄は毒を持つウミヘビを真似て身を守るためではないかと考えられており、成長するにつれてこの縞模様は薄れていきます。

絶滅危惧種『トラフザメ』の秘密 メスだけで出産する「単為生殖」でも注目?体の柄が特徴的なトラフザメ(提供:PhotoAC)

この柄の幼魚の姿から、「トラ」や「ゼブラ(しまうま)」という名称になったというわけです。成長によってあまりにも姿が違うため、1823年までは違う種だと考えられていました。

トラフザメの幼魚からの成長過程はなかなか見られません。もし水族館でトラフザメが生まれたニュースを見かけたら、ぜひ見比べに行きましょう。

不思議なトラフザメ観察

混獲や沿岸部の減少などによって、将来絶滅してしまう可能性が危惧されているトラフザメ。彼らを守るために、単為生殖という繁殖の仕組みについて多くの水族館が研究の取り組みを行っています。

幼魚の姿ではトラ柄ですが、成魚になるとヒョウ柄へ変わるというユニークな特徴を持つ同種を見かけることがあれば、ぜひじっくり観察してみてください。

参考文献

・トラフザメが“処女懐胎”、3匹の子サメが誕生-ナショナルジオグラフィック
・絶滅危惧種トラフザメの繁殖に再び成功 広東省珠海市-AFPBB NEWS
・えのすいトリーター日誌ー新江ノ島水族館
・単為生殖で誕生した「トラフザメのこども」 成長中-大洗水族館
・トラフザメーナショナルジオグラフィック

<秋津/サカナトライター>